日本で子ども1人が大学まで行くといくらかかるのか
子育て中の家庭にとって教育費は大きな関心事だ joey333/iStock.
<標準的なモデルで試算すると教育費はトータルで約1200万円、これが少子化の要因の1つになっていることは疑いない>
子育て中の家庭にとって、教育費は大きな関心事だ。「子を大学まで出すのに○円かかる」というレポートを見ては、多くの親が青ざめ、若い夫婦は「やはり出産は控えよう」という考えに傾く。少子化の要因の1つが、高い教育費であるのは疑い得ない。
1人の子どもが大学まで出るのにいくらかかるか。この点については、銀行や生命保険会社等の試算が無数にあるが、官庁統計でも見積もることができる。文科省の『子供の学習費調査』にて、各学年の子ども1人に対し保護者が支出した教育費(年額)の平均値が掲載されている。大学については、日本学生支援機構の『学生生活調査』に学年ごとの授業料や学校納付金等の平均額が出ている。これらを積み上げれば目的の数値が得られる。
<表1>は、幼稚園から大学までの年齢・学年別の支出平均額を掲げたものだ。大学の公立欄は、国立のデータを充てている。
公立を見ると、小学校では学年による違いはあるものの、おおよそ年間30万円と少しの費用を支出している。中学校になると40万円台になり、3年生では57万円に跳ね上がる。高校受験を控え、塾通いが増えるためだろう。
高校になると下がるが、高等学校就学支援金制度により公立高校の授業料が無償になっていることが大きい(年収910万円未満の家庭)。国立大学では、授業料や通学費等を合わせて年間60万円ほどかかる。授業料が54万円ほどなので、通学費等も合わせるとこれくらいになる。
私立になると当然、金額は高くなる。私立小学校は高額で、義務教育とはいえ授業料が徴収されることに加え、裕福な家庭が多いので、通塾や習い事等に多額の費用をかけるためとみられる。大学でも、私立の年間費用のトータルは国立の倍以上だ。
幼稚園から大学までの合計は、オール公立(大学は国立)だと796万円、オール私立だと2368万円だ。後者のコースをたどるのはごくわずかだが、多くの子どもがたどる標準的なコース(幼稚園は私立、小学校から高校は公立、大学は私立)の総額は、黄色マークの数値の合算で1173万円となる。
子ども1人大学まで出すのに、およそ1200万円。2人だと2400万円、3人だと3600万円。確かに高額で、出産しようという意向を萎えさせるのに十分だ。これは2018年度のデータで、翌年度から大学等の学費負担が緩和されているので、最近ではもう少し安くなっているだろう。国は教育費負担を軽減する政策を進め、子育てがしやすい環境を作るべきだ。