最新記事

ヘルス

30代にも忍び寄る『スマホ認知症』 「人の名前が出てこない」「うっかりミスが増えた」

2022年10月30日(日)10時50分
奥村 歩(日本認知症学会専門医・指導医 おくむらメモリークリニック理事長) *東洋経済オンラインからの転載

④生活意欲の低下

スマホを操作する以外、何もやる気が起きなくなります。これは、「スマホ認知症」がスマホ依存を合併していることに関係しています。アルコール依存症の人がお酒を飲むことでしか快楽を得られなくなったり、ゲーム依存症の子供が不規則登校になったりするのと同じ病態です。

⑤体調不良・情緒不安定

心身の状態をコントロールしている前頭葉の機能が低下します。脳の情報処理能力が低下するだけでなく、さまざまな体調不良や情緒不安定を引き起こします。急にキレたり、ささいなことで泣き出したりします。

以上のように、「スマホ認知症」の中核症状は、一般に知られているアルツハイマー型認知症の症状ととてもよく似ています。「人や物の名前が出てこない」「うっかりミスが増えた」など、日常生活に支障が出るものばかりです。決して軽々しく扱うことはできません。

認知症とは違い、「スマホ認知症」は改善できる

「スマホ認知症」を患う受診者が増えたのは、10年ほど前から。その多くは働き盛りの30〜50代で、最近ではその傾向が顕著になっています。診察に来た彼らは、次のような症状を訴えます。

「仕事で重要なアポがあることを忘れてしまった」
 
「大学時代の同級生の名前が思い出せない」
 
「スーパーに着いたら何を買いに来たか忘れてしまった」

しかし、これらの世代が認知症になるには年齢的にまだまだ早いです。30〜50代で認知症を発生することは滅多にありません。直近10年間というと社会のデジタル化が加速した時期です。その急速なデジタル化によって、膨大な情報量をいつでも手軽に入手できるスマホ生活が一般的になり、現代人の脳を疲労させています。

その結果、脳過労の状態になる方が増え、若いのに心配になるくらい「もの忘れ」を頻発する人が多くなっているのです。

記憶には「入力」→「整理・整頓」→「取り出し」という3つの過程があるのですが、脳過労になると「整理・整頓」が追いつかなくなります。新しい情報が入ってくるのに「整理・整頓」がされないと、大切な情報が埋もれてしまい、肝心なときに必要な情報をうまく取り出せなくなります。

そうなると、仕事や家事などのシーンで情報処理能力が著しく低下し、患者さんが訴えるようなど忘れやうっかりミスといった「スマホ認知症」の症状が増えるのです。

reuter_20221027_203224.jpg

脳過労の人の脳内のイメージ(『スマホ脳の処方箋』より)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中