最新記事

宇宙

ついに宇宙の最初期の星 「初代星(ファーストスター)」が残した痕跡が発見された

2022年10月12日(水)20時10分
松岡由希子

宇宙の進化 ttsz -iStock

<ビックバンからわずか数億年後に形成された宇宙で最初に誕生した世代の星「初代星(ファーストスター)」が残した痕跡が発見された......>

宇宙で最初に誕生した世代の星「初代星(ファーストスター)」は、ビックバンからわずか数億年後に形成されたとみられる。これらの恒星は巨大で、その寿命が尽きると超新星爆発を起こしてバラバラになり、星間空間に重元素をまき散らすと考えられているが、その存在を直接示すものはこれまで見つかっていない。

東京大学の吉井譲教授と鮫島寛明特任助教は、クエーサー(銀河の中心核が最も明るく輝く天体)のスペクトルの波長強度をもとにそこに含まれる元素の存在度を推定する方法を開発。豪オーストラリア国立大学、米ノートルダム大学らの研究者とともに、ハワイ島・マウナケア天文台のジェミニ北望遠鏡で近赤外線分光観測した既知で2番目に遠いクエーサー「ULAS J1342+0928」のスペクトルを分析した。

うしかい座方向にある「ULAS J1342+0928」は131億光年の距離に位置することから、誕生からわずか7億年後の宇宙を観測していることになる。

非常に珍しい組成の天体

分析の結果、非常に珍しい組成が見つかった。鉄に対するマグネシウムの比率が著しく低く、太陽での比率に比べて鉄が10倍も多いのだ。研究チームは、この特徴的な組成から「初代星が『対不安定型超新星』を起こした後に残された物質ではないか」と考察している。

「対不安定型超新星」は太陽の150~250倍の質量を持つ巨大な恒星が寿命を迎える際に起こると考えられている。他の超新星爆発と異なり、中性子星やブラックホールといった星の残骸を残さず、すべての物質を周囲に放出するため、「対不安定型超新星」が発生する瞬間をとらえるか、星間空間に放出された物質から化学的な痕跡を特定するしかない。

これまでも天の川銀河のハロー(銀河全体を包み込むように星間物質や球状星団がまばらに分布している球状の領域)の星の中で大質量の「種族Ⅲ(宇宙で最初に形成された恒星)」の化学的証拠を探る研究は行われており、2014年8月にはその仮同定が発表された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

イケア、NZに1号店オープン 本国から最も遠い店舗

ビジネス

ステランティスCEO、米市場でハイブリッド車を最優

ビジネス

米ダラー・ゼネラル、通期の業績予想を上方修正

ビジネス

実質消費支出10月は3.0%減、6カ月ぶりマイナス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中