最新記事

学校

日本の学校は、先進国中で特に無償給食の実施率が低い

2022年10月12日(水)10時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

上記は小学校全体のデータだが、低所得家庭の児童が多い学校もあれば、そうでない学校もある。貧困児童の割合に応じて小学校を3つのグループに分け、無償給食の実施率を出すこともできる。経済的に恵まれない児童が10%未満、10~25%、26%以上の3つにグループ分けし、「全員に実施」「一部の児童に実施」「実施せず」の回答分布をとると<図2>のようになる。

data221012-chart02.png

日本、アメリカ、スウェーデンのデータだが、3つの国の特性がはっきりと出ている。スウェーデンは貧困児童の割合に関係なく「全員に実施」の学校が100%の完全実施型、アメリカは貧困児童の割合に応じて実施率が高くなる傾斜実施型であるのに対し、日本は学校タイプに関係なく実施率が低い。貧困児童が4分の1以上を占める学校でも、「一部の児童に実施」の学校が13%あるに過ぎない。

日本では、義務教育段階で無償給食の幅を広げる余地が多分にある。先日、2022年のOECDの教育白書が公表されたが、公的教育費支出の対GDP比は相変わらず低い(下から2番目)。一律無償にいきなり踏み切るのは難しいにしても、低所得層の子どもに限って無償にすることはできる。課税所得の情報と連動させ、一定以上の所得の家庭に限り、住民税と一緒に引き落とすようにすれば給食費徴収の手間も省かれる。

子どもの育ちは社会全体で支える。この理念の具現度は無償給食の実施率で測れるが、日本は先進諸国の中では低い部類にあるのは確かだ。

<資料:IEA「TIMSS 2015」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米判事、議会襲撃巡る恩赦を批判 「修正主義的神話」

ワールド

米南部、記録的寒波と吹雪で少なくとも12人死亡 9

ワールド

パリ協定再離脱、米石油・ガス業界は反対 トランプ政

ワールド

米軍、メキシコ国境に兵士1500人追加派遣へ さら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中