最新記事

教育

学生の「教員離れ」はロスジェネ採用で解決できる

2022年9月28日(水)10時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

採用の裾野を広げる上で妙案だが、上の世代にも目を向けてほしい。たとえばロスジェネだ。大学卒業時が不況のどん底で、教員採用試験の競争率がものすごく高く、優秀であっても教員になれなかった人が多くいる。2000年度(1999年夏実施)の公立小学校教員採用試験の競争率は12.53倍。県別に見ると、もっと凄まじい数値が出てくる<表2>。

data220928-chart02.png

筆者が新卒だった頃のデータだが、多くの県で10倍を超えている。20倍を超えるのは11県で、最高の和歌山県では54.17倍にもなっていた。にわかに信じがたいが、原資料に受験者325人、採用者6人という数字が記録されている。現在、競争率が1.34倍と最も低い秋田県も、当時は20倍近くだった。

当時の厳しい試験を受けた世代は現在40代半ばだが、優秀でありながらも、夢破れて教壇に立てなかった人が多いはずだ。

ロスジェネでは、教員免許状を持ちつつもそれを活用していない、つまり教員になっていない人が多い。筆者は1999年春に大学を出たが、同年春の小学校教員普通免許状授与数は2万205件(文科省『教員免許状授与件数等調査』)。この世代は2019年に43歳だが、同年の43歳の小学校本務教員は7437人(同省『学校教員統計』)。単純に考えると、この世代の小学校教員免許活用率は36.8%となる。残りの63.2%、実数で1万2768人は、いわゆるペーパーティーチャーということになる。ロスジェネ全体では、これを5倍して6万人ほどいるのではないか。

採用試験がものすごく厳しかった世代で、優秀な人も多くいるはずだ。近年、公務員採用試験でロスジェネ限定試験が実施されているが、教員採用試験でもやってみたらどうか。「夢を、もう一度」と、優秀な人材が押し寄せるかもしれない。

教員免許更新制で失効していた免許状も、制度変更によって手続きなしで復活することになった。団塊ジュニア世代の少し下で、人数的にも多いロスジェネの力を活かす素地はできている。

<資料:文科省『公立学校教員採用選考試験の実施状況』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中