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遺伝子似ていたのは顔だけじゃない......『他人の空似』は遺伝子変異でも共通点があった
「他人の空似」......似ていたのは顔だけじゃなかった CREDIT: FRANCOIS BRUNELLE
<顔つきが偶然よく似ている「他人の空似」は、遺伝子変異などでも共通点があることが明らかとなった>
血縁がつながっていないにもかかわらず、顔つきが偶然よく似ている「他人の空似」は、遺伝子変異などでも共通点があることが明らかとなった。一連の研究成果は2022年8月23日付の学術雑誌「セルリポーツh」で発表されている。
顔つきが偶然よく似ている32組のDNAを分析
スペインのホセ・カレーラス白血病研究所(IJC)の研究チームは、顔つきが似ている人たちの画像を世界中から収集しているカナダ人アーティストのフランソワ・ブリュネル氏の協力を得、そっくりなペア32組の顔写真を入手。これらを対象に身長、体重などの生体情報やライフスタイルに関するアンケートに回答してもらい、それぞれから唾液試料を採取した。
研究チームはまず、3種類の顔認識アルゴリズムを用いて32組のそっくり度を分析した。その結果、16組が全3種類のアルゴリズムで「そっくり」と判定された。
また、唾液から抽出したDNAを分析したところ、そっくりと判定された16組のうち9組では、3730の遺伝子で1万9277の遺伝子変異が共通し、その共通点の多くが顔や体の特徴と関連していた。
学歴や行動的特徴もそっくりなペアも
一方で、似たような遺伝子型を共有していても、栄養状態や運動習慣、喫煙の有無など、環境要因に影響を受けるマイクロバイオーム(微生物叢)はそれぞれ異なっていた。同様に、細胞がどの遺伝子を使用するか否かを決定・記憶する仕組みである「エピゲノム」も異なっている。
共通する遺伝子変異は顔つきだけでなく、身体的・行動的表現型にも影響をもたらしているようだ。アンケートの回答を分析した結果、身長や体重といった身体的特徴だけでなく、学歴や喫煙習慣の有無といった行動的特徴もそっくりなペアで相関がみられた。研究チームでは「遺伝子変異の共有は似た容姿と関連しているのみならず、共通の習慣や行動にも影響を与えている可能性がある」と考察している。
今回の研究結果は二次元のモノクロ画像をベースとしたものであり、サンプル数が少なく、その多くがヨーロッパ人である点で限定的ではあるものの、生物医学や進化学、法医学など、様々な分野で今後の研究に寄与する可能性がある。
顔写真からどのゲノムを持つかを知ることができるようになるかも
研究論文の責任著者でホセ・カレーラス白血病研究所のディレクターを務めるマネル・エステラー博士は「将来、この研究結果が応用され、法医学でDNAから容疑者の顔を復元したり、遺伝子検査で患者の顔写真からどのゲノムを持つかを知ることができるようになるかもしれない」と述べている。
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