最新記事

遺伝子

似ていたのは顔だけじゃない......『他人の空似』は遺伝子変異でも共通点があった

2022年8月26日(金)17時36分
松岡由希子

「他人の空似」......似ていたのは顔だけじゃなかった CREDIT: FRANCOIS BRUNELLE

<顔つきが偶然よく似ている「他人の空似」は、遺伝子変異などでも共通点があることが明らかとなった>

血縁がつながっていないにもかかわらず、顔つきが偶然よく似ている「他人の空似」は、遺伝子変異などでも共通点があることが明らかとなった。一連の研究成果は2022年8月23日付の学術雑誌「セルリポーツh」で発表されている。

顔つきが偶然よく似ている32組のDNAを分析

スペインのホセ・カレーラス白血病研究所(IJC)の研究チームは、顔つきが似ている人たちの画像を世界中から収集しているカナダ人アーティストのフランソワ・ブリュネル氏の協力を得、そっくりなペア32組の顔写真を入手。これらを対象に身長、体重などの生体情報やライフスタイルに関するアンケートに回答してもらい、それぞれから唾液試料を採取した。

研究チームはまず、3種類の顔認識アルゴリズムを用いて32組のそっくり度を分析した。その結果、16組が全3種類のアルゴリズムで「そっくり」と判定された。

また、唾液から抽出したDNAを分析したところ、そっくりと判定された16組のうち9組では、3730の遺伝子で1万9277の遺伝子変異が共通し、その共通点の多くが顔や体の特徴と関連していた。

学歴や行動的特徴もそっくりなペアも

一方で、似たような遺伝子型を共有していても、栄養状態や運動習慣、喫煙の有無など、環境要因に影響を受けるマイクロバイオーム(微生物叢)はそれぞれ異なっていた。同様に、細胞がどの遺伝子を使用するか否かを決定・記憶する仕組みである「エピゲノム」も異なっている。

共通する遺伝子変異は顔つきだけでなく、身体的・行動的表現型にも影響をもたらしているようだ。アンケートの回答を分析した結果、身長や体重といった身体的特徴だけでなく、学歴や喫煙習慣の有無といった行動的特徴もそっくりなペアで相関がみられた。研究チームでは「遺伝子変異の共有は似た容姿と関連しているのみならず、共通の習慣や行動にも影響を与えている可能性がある」と考察している。

今回の研究結果は二次元のモノクロ画像をベースとしたものであり、サンプル数が少なく、その多くがヨーロッパ人である点で限定的ではあるものの、生物医学や進化学、法医学など、様々な分野で今後の研究に寄与する可能性がある。

顔写真からどのゲノムを持つかを知ることができるようになるかも

研究論文の責任著者でホセ・カレーラス白血病研究所のディレクターを務めるマネル・エステラー博士は「将来、この研究結果が応用され、法医学でDNAから容疑者の顔を復元したり、遺伝子検査で患者の顔写真からどのゲノムを持つかを知ることができるようになるかもしれない」と述べている。

【動画】>>■■【動画】顔つきが似ている人たちを世界中から集めるアーティスト■■

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

南ア「イランとの関係断つ理由ない」、米の圧力に抵抗

ビジネス

ナフサ、現時点で直ちに需給上の問題生じていない=赤

ワールド

イランで6病院が避難、医療体制は対応可能な状態=W

ビジネス

基調的な物価上昇率、2%に向けて緩やかに上昇=植田
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中