「私を見たら泣け」 干ばつによる深刻な影響を警告する石がチェコの川底から出現
エルベ川に「ハンガーストーン」が出現した REUTERS/David W Cerny
<厳しい干ばつに伴って、チェコ北部からドイツ東部を流れて北海へ注ぎ込むエルベ川では水位が低下し、川底にある古い丸石「ハンガーストーン」が出現した......>
欧州が深刻な干ばつに見舞われている。欧州干ばつ観測所(EDO)によると、EU域内の47%で土壌が水分不足となっている「警告レベル」にあり、17%で植生がストレスを受ける「警戒レベル」に達している(2022年8月19日時点)。
「私を見たら泣け」と刻まれている
厳しい干ばつに伴って、チェコ北部からドイツ東部を流れて北海へ注ぎ込むエルベ川では水位が低下し、2022年8月中旬、チェコ北部ジェチーン近くの川底にある古い丸石「ハンガーストーン」が出現した。欧米のメディアで広く報じられ、SNS上でも話題となっている。
チェコのマサリク大学らの研究チームが2013年5月に発表した研究論文によると、「ハンガーストーン」は1616年に作られたとみられる。「私を見たら泣け」を意味する文がドイツ語で刻まれており、干ばつによって凶作となり、食料不足や物価高、飢餓がもたらされることを警告している。
この「ハンガーストーン」には、1900年以前に起こった干ばつとして、1417年、1616年、1707年、1746年、1790年、1800年、1811年、1830年、1842年、1868年、1892年、1893年が記録されている。最近では、2018年8月にも「ハンガーストーン」が出現した。
過去500年で最悪となるおそれ
欧州委員会共同研究センター(EC-JRC)によると、現在の干ばつは過去500年で最悪となるおそれがある。主任研究員のアンドレア・トレチ博士は8月9日の記者会見で「2018年の干ばつは少なくとも過去500年で他に類を見ない厳しいものだったが、今年は2018年よりもさらに悪いと考えられる」との見解を示した。
干ばつの影響はすでに欧州各国に広がっている。ドイツではライン川の水位が低下し、物流や観光に影響を及ぼしている。また、イタリア北部のポー川では干上がった川底から重さ450キロもの第二次世界大戦中の不発弾が見つかった。