戦いを拒んで帰国し、迫害されるロシアの少数民族兵士
Wives of Soldiers in Putin's Army Take to the Street, Demand Answers
訓練で雪のなかに横たわるロシアの空挺部隊(3月15日、ロシアのスタブロポリ) Eduard Korniyenko-REUTERS
<ウクライナの戦場に駆り出されたロシアの少数民族兵士が故郷に帰り、脱走兵にされている。なかには凍傷を放置して手足を切断した例も>
ウラジーミル・プーチン大統領が主導する対ウクライナ戦争の前線で、ロシア軍の一部兵士は戦闘への参加を拒み、帰国している。そのなかには、凍傷にかかって手足の一部を切断せざるを得なかった者がいたことを、兵士らの故郷の人権活動家が明らかにした。
この活動家と軍事弁護士が独立系英字紙モスクワ・タイムズ紙に語ったところによると、プーチンのウクライナ侵攻からわずか数週間の3月、ロシア軍のある部隊の兵士300人が命令に反してウクライナ東部ドネツク州の陣地を離れ、故郷であるダゲスタン共和国の町ブイナクスの基地へ戻ってきたという。
同記事によれば、兵士たちは契約軍人で、基地に戻ってから契約解除の手続きを開始し、その後、脱走兵として扱われた。
契約軍人らから弁護を依頼された軍事弁護士は、モスクワ・タイムズ紙に対し、ウクライナでの戦闘に加わることを拒否して無断で任地を離れたことによって、彼らが重罪に問われる可能性が出てきたという。
「兵士らは軍服や武器に問題があったと主張している」と、この弁護士は語った。「軍人が10日以上勤務地を離れた場合、刑事責任が問われる可能性があり、現在、軍検察庁が調査している」
ある人権活動家によると、帰国時に手足が凍傷にかかっていた兵士もいて、何人かは「黒くなった部分を切り落とさなければならなかった」ため、障害者になった。
武器も備品も欠陥品
この活動家によると、兵士たちの軍服や備品には問題があり、支給された武器は「欠陥品」だったという。一部の兵士は親族や地元当局からの圧力でウクライナに戻った。
モスクワ・タイムズ紙は、兵士たちの帰国にはプライベートな事情がからみ、退役したことを恥じる気持ちもあるため、兵士に直接話を聞くことはできなかったとしている。
本誌は、これらの主張を独自に確認することができず、ロシア外務省にコメントを求めている。
今回のケースが報道される前にも、ブリヤート共和国出身のロシア軍兵士100人がウクライナでの戦闘を拒否して帰国していたことが、反戦団体によって報告された。
ブリヤート族が結成した反戦運動団体「フリー・ブリヤート財団」によると、ロシア国防省との契約を解除した軍人150人を乗せた飛行機が、7月9日にモンゴル国境近くのロシア領内に着陸したという。
同財団の創設者アレクサンドラ・ガルマジャポワは、軍人らの妻たちは今年6月、ロシア軍に従軍中の夫は契約を打ち切ろうとしており、契約解除後は帰国させてほしいと訴える動画を作成し、ブリヤート共和国の首長に請願した、とウクライナのテレビ局に語った。
帰国の途に就く前、軍人らはウクライナ東部ルハンシク州の収容所に数日間拘束され、訴訟を起こすと脅かされたという。