火星にある「人の目」状クレーター、探査衛星が捉える 「血管」部分は川の痕跡
貴重な地形が集まるアオニア大陸
クレーターが位置する火星のアオニア大陸は、めずらしい地形の宝庫だ。直径200キロのローウェル・クレーターなど、研究上貴重な地形が多くみつかっている。今回の「片目クレーター」も、ローウェル・クレーターからさほど遠くないエリアで発見された。
こうしたクレーターの多くは、数十億年前というはるかな昔に形成されたものだと考えられている。サイエンス・アラート誌は、約40億年前の「後期重爆撃」と呼ばれる期間にこのような大規模なクレーターが多く誕生したと解説している。
この期間は太陽系の広い範囲で天体衝突が相次ぎ、多くの衝突痕が刻まれた。地球初の生命として単細胞生物が誕生したのが38億年前と考えられており、この時期前後の出来事ということになる。こうした地形の多くは地球上では風化などで消えてしまったが、地質学的な変動も含めて環境が安定している火星では、現在に至るまで良好な状態で保存されている。
マーズ・エクスプレスは高解像度ステレオカメラ(HRSC)を搭載している。4月の撮影時、フルカラー写真とは別に、地形の高さを示す詳細なカラースケール画像が生成された。興味深い形のクレーターの存在を私たちに教えてくれただけでなく、火星の地形と歴史を解明するための貴重な資料となりそうだ。