最新記事

ロシア

ロシア経済が制裁する側の西側よりよほど好調そうなわけ

In Moscow, Shoppers Feel Far Less Pain than Americans from Ukraine War

2022年6月16日(木)19時14分
マイケル・ウェイシウラ

ロシアのウクライナ侵攻は世界経済の足を引っ張ったが、ウクライナ(今年のGDP成長率は前年比45.1%のマイナスになると予想されている)を除けば、この戦争で最大の経済的な打撃を受けたのはロシアだ。

それでも、「西側の制裁で国家経済が破綻する」という当初の予想を裏切って、ロシア経済は命脈をつなぎ、国民は今の暮らしにまずまず満足している。世論の反発が強まり、反体制派が勢いを増すどころか、生活水準は多少下がったにもかかわらず、首都の通りではデモも行われていない。

この現実を見事に反映しているのがルーブル相場だ。侵攻開始前日の2月23日には1ドル=78.6ルーブル。その後の2週間余りでルーブル安が急激に進み、3月上旬にかけて1ドル=150ルーブル前後まで下落した。だが、そこから上昇に転じ、今や1ドル=60ルーブルを下回る、2018年3月以来の最高値を付けている。

通貨価値だけでは、経済全体の健全性は診断できない。しかしロシア中央銀行がわずか3カ月前には時間の問題と見られていたデフォルト(債務不履行)を回避し、ルーブルが急回復したことが、国民の安心感につながったのは確かだ。

大損したのは高所得層

皮肉な話だが、今のルーブル高は、少なくとも部分的には西側の制裁の「効果」によるものだ。侵攻開始当初、ロシア中銀は資本逃避を防ぐため、現金の引き出しに上限を設け、ルーブル建て預金の金利を25%引き上げた。その後に西側の企業がロシアから一斉に撤退したため、ロシアの為替市場ではドル需要が急減し、ルーブルの対ドル相場が上昇したのだ。

モスクワ国際関係大学のニコライ・トポルニン教授はその辺りの事情をこう説明する。

「独シーメンスがロシア向けの鉄道車両の輸出を停止し、外国の自動車各社がロシア工場を閉鎖するといった動きが相次ぎ、ロシアはエアバスやボーイングの旅客機の部品を入手できず、整備もままならなくなった。だが西側からの輸入が減ったおかげで、貿易収支は改善し(ルーブルも回復した)。ロシア人はルーブル相場を非常に気にする。ルーブルが強ければ、自信を持つのだ」

トポロニンによれば、意外にも制裁で最も打撃を受けているのは庶民ではなく、高所得層だ。

その1人、モスクワ在住の技術者がマックスという仮名で取材に応じてくれた。彼は政治的には中立の立場で、最近までロシアの名だたる民間企業に勤め、高い給与を得ていた。今は外国企業に雇ってもらおうと就職活動を行なっている。彼のような人たちは失業してもすぐに生活に困るわけではない。げんにマックスは市内のヘルスクラブのプールサイドで長椅子に寝そべりながら、メッセンジャー・アプリで本誌の質問に答えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送次期FRB議長にウォーシュ氏指名、トランプ氏「

ビジネス

米金利は「中立」水準、追加利下げ不要=セントルイス

ワールド

トランプ氏、ウクライナ紛争終結「合意近づく」 ロ特

ワールド

トランプ氏「イランは合意望む」、プーチン氏はイラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中