最新記事

バルト3国

バルト3国のラトビアがロシアのテレビ放送を禁止

Russian TV Banned in Latvia Until Putin Gives in to Ukraine's Demands

2022年6月7日(火)19時23分
アントン・スタントン

旧ソ連国のラトビアは、ロシアがウクライナから手を引くまでロシアのテレビ放送を禁止する Ilya Naymushin-REUTERS

<ロシアと国境を接する小国のラトビアが、ロシアのプロパガンダ放送を非合法化>

ロシアがウクライナに対する激しい攻撃を続けるなか、ウクライナと同じくロシアと国境を接するバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)のラトビアが、ロシアのテレビ局の放送禁止を決定した。

ラトビアの報道機関「デルフィ」によれば、禁止措置は6月9日から導入し、ロシアが武力侵攻をやめてウクライナに領土を返還するまで続けるという。6月9日以降は80を超えるチャンネルの放送が禁止されることになる。

ラトビア電子メディア評議会(NEPLP)のイバル・アボリンス会長によれば、この措置は「他国の独立や主権を脅かす国の放送を禁じる新たな法律」に基づくもの。

ロシア当局は、テレビを通じてウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻を正当化するプロパガンダを拡散してきた。3月上旬には報道統制を一段と強化し、政府の見解に沿わない独立系の報道を弾圧・禁止した。

デルフィの報道によれば、ラトビアはロシアで3月に閉鎖を余儀なくされた独立系テレビ局「ドーシチ(レインTV)」については、今後もラトビア国内での放送を許可するという。

「Z」のシンボルも禁止

旧ソ連の構成国だったラトビアは、武力侵攻が始まった当初からウクライナを支持してきた。ラトビアはMATOにもEUにも加盟しており、ウクライナ侵攻が始まった数日後にはウクライナ軍に資金援助も行っている。

ラトビアのエギルス・レビツ大統領は3月、米CNNとのインタビューの中で、ヨーロッパの国々にはウクライナを支援する責任があると述べた。

「ウクライナに対する侵略行為は、西側に対する侵略行為と同じだ」とレビツは言い、西側の価値観を守るために戦っているウクライナを称賛した。

ラトビアはウクライナに、スティンガー地対空ミサイルシステムなど、武器の供与も行っている。またラトビア議会は3月、ロシアによるウクライナ侵攻への支持を表すシンボルとして使われている「Z」の文字を、公の場所で使用することを禁じる法案を可決した。

ロシアによるウクライナ侵攻から、既に100日以上が経過している。ロシア当局はウクライナの迅速な占領を目指していたものの、ウクライナ軍の激しい抵抗に遭い、思うような戦果が得られていない。ロシアは過去数週間、ウクライナ東部に攻撃を集中させており、セベロドネツクで両軍の激しい攻防が繰り広げられている。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英予算責任局、来年3月3日に経済・財政予測公表

ビジネス

日経平均は小反落で寄り付く、利益確定売りが上値抑制

ワールド

グリーンランドは「安全保障に必要」、トランプ氏が特

ビジネス

ペルツ氏のトライアンの連合、アクティブ運用ジャナス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中