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メコン川の主か? 世界最大300kg近い巨大エイに専門家も唖然 カンボジア

2022年6月23日(木)19時30分
佐藤太郎

生態調査に役立つ可能性

一方人間のせいで、メコン川の生態は危機に瀕している。特に、近年続いた大規模なダム建設ラッシュの影響で、魚の産卵場所が奪われることを科学者たちは懸念している。

「大型魚は世界的に絶滅の危機に瀕しています。成魚になるまでに長い時間がかかりますが、高値で取引されるため成熟する前に獲られ、繁殖のチャンスは失われます」と、ホーガン氏は言う。

「こういった大型魚の多くは回遊魚のため、生き残るためには広い海域が必要です。メコン側近隣に建設されたダムが、大型魚の生息地を分断しているのは明らかです」

ホーガン氏によると、世界の巨大淡水魚の約70%が絶滅の危機に瀕しており、メコン川に生息する魚種は全てこれに含まれる。

「ボラミー」捕獲の現場に急行したチームは、エイを放す前に尾の近くに装置を挿入した。この装置は今後1年間追跡情報を送信し、巨大淡水魚に関する前例のないデータが得られると期待されている。

「エイ類の最大種であるオニイトマキエイの生態はほとんど解明されていません。学名も含めて、過去20年間に何度も名前が変わっています」と、ホーガン氏。「東南アジア全域に生息していますが、ほぼ情報がない。移動パターンもわかっておらず、その生態は謎に包まれています」

同じ地域では、過去2ヶ月間に巨大エイがすでに3匹捕獲されている。すべてメスとみられ、研究者はこの地域がオニイトマキエイの産卵のホットスポットである可能性が高いと予想している。

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