最新記事

ウクライナ支援

反露のリトアニア、市民が募金で軍用ドローンをウクライナに購入

Lithuanian Citizens Pool $4.7M to Buy Advanced Drone for Ukraine's Military A.Greeg-iStock.

2022年5月30日(月)16時48分
ナタリー・コラロッシ

ウクライナの首都キエフの軍事パレードにも登場したバイラクタルTB2(2021年8月) 

<歴史的に初の事例で、一般市民3日で470万ドルを集め、トルコの軍用ドローン「バイラクタルTB2」をウクライナに送る予定>

バルト3国の1つリトアニアで、先進的な軍事用ドローン(無人機)を購入してウクライナに提供しようという募金活動が行われた。

募金活動を行った地元のインターネット放送局の話としてロイター通信が伝えたところでは、多くの一般市民が募金に応じ、3日半で予定額に到達したという。募金総額は約470万ドルで、対ロシア戦でおおいに威力を発揮しているトルコの「バイラクタルTB2」を購入するのに使われる予定だ。

ロイターはまた、「一般市民がバイラクタルのようなものを購入するために募金活動を行うのは歴史上初めて。前代未聞で驚くべき話だ」との駐リトアニアのウクライナ大使の談話を伝えている。

ウクライナは近年、TB2をトルコの企業から20機以上購入したが、今年3月上旬にも16機を追加した。今回のロシアによるウクライナ侵攻では大いに戦果を上げて伝説的な存在となり、ニューヨーク・タイムズによれば「(TB2が)ロシアの無法者たちを幽霊に変える」という歌が生まれたほどだ。

リトアニアはかつてソ連に属し、いまではNATOに加盟している。ロシアのウクライナ侵攻を一貫して激しく非難するとともに、バルト3国のラトビア、エストニアと同様に、ロシアが自国にも侵攻してくることへの懸念を表明してきた。この数カ月は国防の強化に向けて舵を切っている。

次は自分たちが危ないという危機感

リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相は27日、ロシアがウクライナにおいて「ジェノサイド(集団虐殺)」を行おうとしていると非難。また、もし和平のためにウクライナが領土をロシアに割譲する事態になれば、それはプーチン政権の行為に「お墨付き」を与えることになってしまうと警告した。TB2購入のための募金に応じたリトアニア人の中からは、血みどろの戦争を終わらせようとするウクライナを支援できてうれしいとの声も聞かれる。

100ユーロ相当を募金した32歳のリトアニア女性はこう語ったとロイターは伝えている。「この戦争が始まる前には、武器を買うことになるなんて誰も考えもしなかった。だが今ではそれが当たり前のことになっている。世界をよりよくするには何かをしなければ」

またこの女性は「ここのところ、ウクライナに武器を支援するために募金していた。勝利まで続けるつもりだ」と述べた。次はリトアニアがロシアに侵攻されるのではという恐怖心もあるという。

ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから3カ月以上が経過し、ウクライナの兵士や一般市民が多数、命を落とした。もっともロシア軍は激しい抵抗に遭い、ろくな戦果を挙げるに至っていない。


ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中