最新記事

再生可能エネルギー

「夜間ソーラー発電」が出力実験に成功 ソーラーの逆の原理で電力を生成

2022年5月30日(月)18時50分
青葉やまと

ソーラー発電の弱みを補完

CO2を排出しない「グリーン電力」への注目が高まるが、ソーラー発電はその代表例といえるだろう。ソーラー発電の可能性は近年急速に知られるようになっており、大規模なソーラー発電施設も相次いで建設されるようになった。

これに対し、太陽由来の熱を利用した夜間発電の認知度はこれまで高くなかった。研究チームは夜間ソーラーを、「太陽光発電に対する、知名度がずっと低い片割れ」と表現している。

夜間ソーラーは一般的な太陽光発電と異なり、夜間の電力需要に応えられる可能性がある。また、赤外線による放熱があれば発電可能であるため、常にパネルを太陽の方向に向けたり地面に固定したりしなくてよい利点がある。

実験を主導したネッド・エキンズ=ダイクス准教授は将来的に、例えば体温をもとに発電し、小型機器の電池を不要にしたりバッテリーに充電したりという応用法も視野に入れているようだ。

aoba20220530vc90-1.jpeg

人体の熱が発電の潜在的なターゲットになる可能性があることを示している  UNSW


課題は発電効率

今回の研究の主な成果は、サーモラジエイティブ・ダイオードを用いた発電が可能なことを実際に証明した点にある。サーモラジエイティブ・ダイオードは理論的に夜間の発電や廃熱を利用した電力生成が期待できると考えられていたが、実証と課題の検証は本格的に行われてこなかった。

課題は変換効率の向上による出力上昇だが、これに関してダイクス准教授は楽観的な見通しを示している。1954年に初めて実用化された太陽電池は2%という低いエネルギー変換効率に留まったが、現在では23%にまで改善した。夜間ソーラーも同様に飛躍的な改善に成功すれば、実用化の可能性は十分にありそうだ。

ただし、相応の年月は必要となる。准教授はニュー・アトラスに対し、「ここ大学内での研究が、あと10年ほど必要だと考えています。その後、産業界が興味を示してくれる必要があります」と述べている。実用化には今後最低でも10年がかかる見込みだが、商品化に至れば新たなグリーンエネルギーとして活用されそうだ。

夜間ソーラーに関しては、2020年には米カリフォルニア大学の研究者たちも専用の発電セルを開発するなど、研究が相次いでいる。ソーラー発電は日中のみという現代の常識は、数十年後には過去のものとなっているのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中