思いつきで政策連発して経済破綻──大統領一族がやりたい放題のスリランカ
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一方、ラジャパクサ兄弟の政策は、ただでさえおぼつかないスリランカ経済に大きなダメージを与えてきた。
ラジャパクサ大統領は21年、大統領選での公約どおり有機農業への全面移行を発表し、化学肥料や農薬の使用を禁止した。準備期間もなく導入された措置に国内の農業は大混乱。主要作物の生産高は急減し、食料価格は高騰している。
慌てたラジャパクサ政権は、農家の収入保証をする一方で、減税にも踏み切ったため、財政は一段と悪化した。さらにコロナ禍で経済の柱である観光業が大打撃を受けたほか、海外にいる出稼ぎ労働者からの送金が激減したため、スリランカ財政は一段と厳しさを増した。
スリランカは多様な民族や政治グループがあることで知られるが、ラジャパクサ大統領の退任を求める点では一致しており、全国各地で街頭デモが実施されてきた。これを受け、4月3日までにほとんどの閣僚が辞職したが、肝心の大統領と首相は頑として権力の座に居座っている(2人の弟のバシル・ラジャパクサ財務相は辞職した)。
その背景には軍の支持があるようだ。理由は2つある。第1に、そもそもスリランカでは、軍は強力だが文民政権を尊重しており、政権を支える立場に徹している。これは一部の近隣諸国とは大きな違いだ。
第2に、ラジャパクサ兄弟は軍と関係が深い。05年にマヒンダ(現首相)が大統領に就任したとき、弟のゴタバヤ(現大統領)を国防次官にした。ちょうど内戦が収束に向かっていた時期だ。兄弟は、このとき軍が犯したとされる人権侵害を見逃してやり、さらに国際的な調査にもストップをかけたため、軍は大きな恩義を感じているらしい。
それでもラジャパクサ兄弟は、現在の危機を突破する方法を探している。その一環としてインドとの関係修復にも励んでいる。中国に対抗心を燃やすインドとしては、スリランカへの影響力を拡大したい思いもあるのだろう。4月中旬、インド政府が新たに20億ドル以上の金融支援を行う方針であることが明らかになった。
その一方で、中国は現在のスリランカの経済危機には、積極的に救済の手を差し伸べていないようだ。これは上海などで急拡大する新型コロナへの対応に忙しいのと、かねてからのサプライチェーン危機で、中国経済も苦しい立場にあるからかもしれない。スリランカの金融当局としても、これ以上中国への依存を拡大したくはないようだ。