最新記事

ロシア兵

プーチン直属の国家親衛隊でウクライナ参戦拒否が続出

Russian Soldiers Refuse to Fight Putin's Ukraine War—Report

2022年4月6日(水)16時14分
イザベル・ファン・ブリューゲン

2020年4月、戦勝記念日向けの飾りの間を歩く国家親衛隊兵士(カリーニングラード) Vitaly Nevar-REUTERS

<ずさんな侵攻命令に反発した大統領直属の親衛隊の兵士が集団でウクライナ侵攻への参加を拒み、法廷闘争も辞さない覚悟を示している>

ロシア領内のハカシア共和国でロシア連邦国家親衛隊に所属する兵士少なくとも11人が、ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻への参加を拒否したと報じられた。

国家親衛隊はロシア国内で主に警察的役割を担う大統領直属の軍組織で、ロシア連邦軍とは別の指揮系統に属している。シベリア南部に位置するハカシア共和国の地元メディア、ニューフォーカスによれば、11人は国家親衛隊の特殊部隊に属する兵士たちで、侵攻作戦に参加する意思がないことを上官に告げたという。

その後、兵士たちは国境付近の野営地から連れ出され、ハカシアに送り返された。軍幹部は「任務に不適任」と、この兵士たちを解雇しようとした。

11人の兵士は、この決定に異議を唱える用意があるとしている。

本誌は現在、情報確認を行っている。

ニューフォーカスによると、特殊部隊の隊員たちは、軍司令部がウクライナにおけるロシア軍の実際の損失をモスクワの中央政府から隠していると考えている。プーチンのいわゆる「特別軍事作戦」では、多くのシベリアの兵士が犠牲になっている。

特殊部隊は指揮官から、負傷者やウクライナでの日々の作戦について沈黙を守るよう命じられたという。隊員は家族にも詳細を話さないように指示された。

不満を訴える兵士

ロシア南部の都市クラスノダールでも国家親衛隊12人がウクライナの戦争への出動命令を拒否して解雇され、不当解雇訴訟を起こした。軍幹部らは今後、直面するかもしれない事態を「警戒し、怯えている」とニューフォーカスは指摘している。

国家親衛隊員12人を弁護するロシア人弁護士ミハイル・ベニヤシは、これまで弁護チームには約1000人から連絡があったと語った。

「戦いに行きたくない兵士は多い」というベニヤシのコメントは、4月1日付のフィナンシャル・タイムズに掲載された。

人権派弁護士パベル・チホフは、国家親衛隊のファリド・チタフ大尉と部下11人が2月25日にウクライナ侵攻への参加を拒否し、出動命令は 「違法」と主張したことを、テレグラムへの投稿で明らかにした。

「特別軍事作戦に参加するためにウクライナに入ることも、作戦の任務と条件についても、誰一人として知らされておらず、その結果、彼らは同意しなかった」とチホフは書いている。

ラトビアに拠点を置く独立系ロシア語ニュースメディア、メデューサによると、プーチンが2月24日に隣国ウクライナへの侵攻を開始して以来、ロシア国家親衛隊では少なくとも7人が戦闘で死亡しているという。

つい先日も、装備も整っていないのに、中央政府から明確な計画を知らされることなく、ウクライナのある地域に行くよう命じられた、とロシア兵が不満を訴える動画が公開されたばかりだ。

これまでのところ、ロシア軍の損失については様々な説があるが、ウクライナ政府は1万6000人にのぼると主張している。ロシア軍は指揮官も失っており、ウクライナ側の主張では、将官6人以上が死亡している。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジルの11月外国直接投資は予想上回る、中銀の通

ワールド

マレーシア外相、カンボジアとタイに停戦再開促す A

ワールド

米CBS、エルサルバドル刑務所の調査報道放映を直前

ワールド

新潟県議会が柏崎刈羽原発再稼働を容認、「地元同意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中