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認知症貧しいと認知症になりやすい 研究結果
Living in a Poorer Area Increases Your Risk of Dementia, Study Says
水も緑もない環境は脳にも悪い Armand Burger-iStock.
<裕福な地区に暮らす人々は、貧しい地区に暮らす人々と比べて記憶力が良く、認知症リスクも低いという研究結果が出た。いったいどういうことなのか>
オーストラリアで行われた研究によると、認知症のリスクと住んでいる地域の社会経済状況とは相関関係があるようだ。
3月25日付で「JAMAネットワーク・オープン」に発表されたモナシュ大学の研究では、40〜70歳の成人4656人を対象に、2016〜2020年の健康データを調査した。4656人はオーストラリアのさまざまな地域に暮らしており、認知症などの主要な神経疾患と診断された人はいなかった。
調査の結果、裕福な地区に暮らす人々は、貧しい地区に暮らす人々と比べて記憶力が良く、認知症リスクのスコアも低かった。
裕福で安全な地区とそうでない地区における記憶力の差は、高齢者においてより顕著だった。しかしより恵まれない地区においては、中年期でも、認知症リスクの高さと「記憶力における微妙な差」が見られる、と研究チームは結論している。
世界保健機関(WHO)によれば、全世界の認知症患者は5500万人を超えており、毎年1000万人近くが新たに発症している。医学誌「ランセット」に発表された2020年の研究では、認知症の40%は、危険因子を改善することで予防または進行を遅らせることが可能だと判明している。
住んでいる地域の社会経済的背景と、住民が認知症になるリスクの関連性には、多くの社会的・環境的・心理的要因が影響している可能性がある。
例えば、米国立老化研究所(NIA)、米国立衛生研究所(NIH)、米環境保護庁(EPA)の共同研究によれば、医療と緑地は、高齢者を認知症のリスクから守るとされており、貧しい地域はその両方へのアクセスが難しい。
公共プールや緑地は大事
また、中国の研究チームが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した研究では、大気汚染が認知機能の低下と結び付けられているが、大気汚染も貧しい地域の方が深刻な傾向がある。また、健康的な食事と認知機能の上昇には相関関係があると複数の研究が示しているが、多くの場合、健康的な食品はより高価だ。
人の安心感や、コミュニティーの結びつきに影響を与える「犯罪や社会不安」も、貧しい地区における住民の認知症リスクを高めている可能性がある。さらに、複数の研究によれば、社会的な不利益や差別、経済的な逆境に起因する慢性的なストレスも、人の脳をむしばむ。ストレスと相関するホルモンであるコルチゾールが大量に分泌され、神経毒作用を発揮するためだ。
モナシュ大学の研究を率いたマシュー・ペイス教授はプレスリリースの中で、認知症リスクにおける不平等を是正するには、さらなる研究が必要だと述べている。
「健康的な生活習慣は、認知症リスクを減らす鍵を握る要素であり、すべての人が、ジムや公共プール、緑地、医療機関などの地域施設にアクセスできることが重要だ。現在は、必ずしもそうはなっていない」
(翻訳:ガリレオ)
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