最新記事

オピニオン

ウクライナ戦争を陰で支える中国に制裁を

China's Behind-the-Scenes Role in Ukraine War

2022年3月15日(火)19時24分
ゴードン・チャン(ジャーナリスト、作家)

中国がプーチンのウクライナ侵攻計画を知っていたことは明らかだ。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、中国政府はロシア政府に対して、北京での冬季オリンピックが閉幕するまでウクライナ侵攻に踏み切らないよう要請していた。そして北京オリンピックは2月20日に閉幕。その直後の2月24日に、ロシアはウクライナ侵攻を開始した。

アメリカの最恵国待遇にあたる「恒久的正常貿易関係(PNTR)」の地位をどの国に認めるかは、(大統領ではなく)議会が決める。2021年3月には、3人の共和党上院議員――トム・コットン(アーカンソー州選出)、ジェームズ・インホーフ(オクラホマ州)とリック・スコット(フロリダ州)――が中国のPNTRの地位をはく奪する「中国貿易関係法案」を議会に提出した。同法案は、中国との貿易関係について(中国にPNTRの地位を認めた)2001年以前の状態に戻し、毎年中国との貿易関係を見直すよう求めた。

「中国の幻想」は誤りだ

また熱心な人権擁護派のクリス・スミス下院議員(共和党・ニュージャージー州選出)、トム・スオジ下院議員(民主党・ニューヨーク州)は今週にも、中国のPNTRの地位をはく奪する法案を共同で提出する見通しだ。

米下院トム・ラントス人権委員会の共同議長であるスミスは、「支持政党を問わず、多くの企業や政治指導者たちが『中国幻想』に陥り、貿易が活性化すれば中国も私たちのように民主的になると信じて人権侵害にも目をつぶってきた」と本誌に語った。「その考えは誤りだった」

米議会は「人権問題についての具体的な進捗に応じて、正常な貿易関係を更新するかどうかを毎年見直すべきだ」と、スミスは言う。

彼の言うとおりだ。中国はこれまで、PNTRという安泰な地位を確保した上で、ジェノサイド(集団虐殺)をはじめとする人道に対する罪を冒してきた。中でも顕著なのが、ウイグル族やカザフ族などの少数派民族に対する弾圧だ。そして今回、中国はロシアによるウクライナ人殺害を間接的に支援している。アメリカは、国内で残虐行為をはたらき、海外で侵略や侵害行為をはたらいている国々と貿易を行うべきではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、25年は約20%下落 供給過剰巡る懸念で

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中