ウクライナの宇宙産業がなければ、世界の多くの宇宙開発計画は存在しなかった
ウクライナの国営企業ユージュマシュは、安定した実績を誇ってきた YouTube
<ソビエト時代からウクライナの宇宙機関は、ロケット、人工衛星など安定した実績を誇り、世界の宇宙プロジェクトで重要な役割を担ってきた>
ロシアの侵攻によって被害が拡大するいっぽうのウクライナは、世界の宇宙開発において重要な役割を担ってきた。
ウクライナでは、1940年代半ばから1950年代初旬にかけて、宇宙ロケットや人工衛星などを開発するユージュノエ設計局やこれらを製造する国営企業ユージュマシュが設立され、1950年代以降、世界の宇宙開発において重要な役割を果たしてきた。1991年のソビエト連邦からの独立に伴って、1992年にはウクライナ国立宇宙機関(SSAU)を創設している。ウクライナの宇宙産業がなければ、多くの宇宙開発計画は存在しなかったといえるだろう。
国営企業「ユージュマシュ」の安定した実績
ユージュマスは打ち上げロケット「ゼニット」を製造したことで知られる。「ゼニット」は、1985年4月に初めて打ち上げられて以降、2017年12月までに計71回の打ち上げ実績を有する。
また、ソビエト連邦の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「R-36」やこれをベースに開発された衛星打ち上げロケット「ツィクロン」は、ユージュノエ設計局によって設計され、ユージュマシュによって製造された。
欧州宇宙機関(ESA)の低軌道用人工衛星打ち上げロケット「ヴェガ」の4段目エンジン「RD-843」も、ユージュノエ設計局によって設計され、ユージュマシュが製造したものだ。
ユージュマスでは、国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を輸送する米国の無人補給船「シグナス」の打ち上げロケット「アンタレス」を米航空宇宙・防衛企業ノースロップ・グラマンと共同で開発し、その1段目タンクを製造している。
ウクライナ南東部ドニプロは、「ロケットの都市」
ユージュマスとユージュノエ設計局がともに本拠地とするウクライナ南東部ドニプロは、ソビエト時代、宇宙、原子力、軍需産業の中心として役割を果たした。現在も航空宇宙産業が盛んな「ロケットの都市」と呼ばれ、英宇宙開発スタートアップ企業スカイローラら、国外のスタートアップ企業もこの地に進出している。