最新記事

食糧危機

ウクライナ侵攻が世界的な食糧危機の引き金に? その主要因は......

2022年3月10日(木)12時10分
松岡由希子

ロシアとベラルーシで、農業用肥料に不可欠なカリ塩を世界の40%近くを生産する SIARHEI RABCHONAK /istock

<ロシアとウクライナはともに世界有数の穀倉地帯。また、ロシアとベラルーシは、農業用肥料に不可欠なカリ塩の主要輸出国だ......>

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は世界の食糧事情にも深刻な影響をおよぼすおそれが懸念されている。

ロシアとウクライナはともに世界有数の穀倉地帯

ロシアとウクライナはともに世界有数の穀倉地帯として知られる。ウクライナの2021年の小麦生産量は3216万トンで、そのうち約73%の2380万トンを輸出している。主な輸出先はインドネシア、エジプト、パキスタン、バングラデシュ、モロッコだ。

一方、ロシアは2021年に7750万トンの小麦を生産し、そのうち約52%の4000万トンをエジプト、トルコなどへ輸出。中東やアフリカを中心とするこれらの国々では、今後、この軍事侵攻の影響により、食品の値上げが見込まれる。

トウモロコシ、ヒマワリ種子油......

ウクライナはトウモロコシの輸出国でもある。2021年の生産量は3965万トンで、そのうち85%超の3400万トンを中国、スペイン、オランダ、エジプト、イランなどへ輸出している。

また、ロシアとウクライナは、ヒマワリ種子やヒマワリ種子油を含む加工品の輸出も盛んだ。中国は2020年9月から2021年2月の半年間で両国から約110万トンのヒマワリ種子油を輸入した。

農業用肥料に不可欠な原料の塩化カリウム

この軍事侵攻は、2022年春以降の食料生産にも影響をもたらすおそれがある。ロシアとその同盟国ベラルーシは、農業用肥料に不可欠な原料である塩化カリウムの主要輸出国だ。両国の生産量は世界全体の37.6%を占めている。

ロシアから多くの原材料を調達する北欧ノルウェーの肥料メーカー大手ヤラ・インターナショナルのCEO(最高経営責任者)スヴェイン・トーレ・ホルセザー氏は、BBC(英国放送協会)の取材で「軍事侵攻前から厳しい状況にはあったが、サプライチェーンにさらなる混乱が生じている」とし、「北半球では今シーズンで最も重要な時期に近づいており、多くの肥料が移動するタイミングであるため、その影響を受ける可能性が高い」と懸念を示す。

「食糧危機が起こるか否かではなく、どれほど大きくなるかだ」

ロシア産業貿易省は2022年3月4日、国内の肥料メーカーに輸出を一時的に停止するよう勧告した。ホルセザー氏は「世界人口の約半数が肥料のおかげで食料を得ている。もし一部の農作物で圃場から肥料がなくなったら、収穫量は半減するだろう」との見通しを示し、「もはや世界的な食糧危機が起こるか否かではなく、これがどれくらい大きくなるかだ」と警鐘を鳴らしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

IEA、過去最大の石油備蓄放出を提案 WSJ報道

ワールド

トランプ米大統領、テキサス州で製油所新設計画 印企

ワールド

アングル:革命防衛隊が担ぎ上げたイラン新指導者、本

ワールド

LNGカナダが増産、アジア向け輸出拡大 イラン攻撃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 7
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 8
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 9
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中