最新記事

核・ミサイル開発

全米を射程圏内に捉えた北朝鮮の「怪物ICBM」火星17の正体とは

2022年3月25日(金)10時58分
新型とされるICBMの前を歩く金正恩朝鮮労働党総書記

北朝鮮は24日、巨大な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験を行った。写真は、新型とされるICBMの前を歩く金正恩朝鮮労働党総書記。KCNAが24日に公開(2022年 ロイター)

北朝鮮は24日、巨大な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験を行った。米国のどこにでも核弾頭を運べる可能性のある兵器の能力を示した形だ。

韓国と米国の高官らは先に、北朝鮮が2月27日と3月5日に行った発射実験について、火星17システムの一部が関係していたと述べていた。24日のような本格的な実験の準備だった可能性が指摘されていた。

アナリストが「怪物ミサイル」と呼ぶ火星17について、分かっていることをまとめた。

朝鮮中央通信(KCNA)の報道によると、今回の火星17の飛行時間は67分半、飛行距離は1090キロ、最高高度は6248.5キロで、海上の標的に命中した。これらの数字は日韓が報告しているデータに近く、2017年のICBM実験よりも飛行距離、飛行時間ともに伸びている。17年には「火星15」を打ち上げ、飛行時間は53分、最高高度4475キロ、飛行距離950キロだった。

朝鮮中央通信の写真を見ると、火星17は以前のICBM実験と異なり、運搬車両兼起倒式発射機(TEL)から直接発射されている。TELの車軸の数は11軸。アナリストによると、火星17は移動式の液体燃料ICBMとして世界最大だ。

直径は2.4─2.5メートルと推定され、燃料満載時の総質量は8万キロないし11万キロ程度とみられる。北朝鮮を監視している米国のプログラム「38ノース」が明らかにした。

北朝鮮が最初に火星17をお披露目したのは2020年10月の軍事パレードで、アナリストは火星15よりも「相当大きい」ようだと指摘していた。2021年10月には平壌の国防展覧会で2度目の展示を行った。

2月27日と3月5日の発射実験で、この2段式ミサイルの全体が使われたか、部分的な使用にとどまったかは明らかになっていない。一部のアナリストは、1段目しか使わなかった可能性があると述べている。

火星17ほどのサイズであれば、複数の核弾頭とデコイ(おとり)を運んでミサイル防衛システムを突破しやすいように設計されるのではないかと、アナリストは推測している。

一部の専門家は、北朝鮮が2月27日と3月5日に実験したと主張する衛星技術が、複数独立標的型再突入機(MIRV、マーブ)システムにも使われる可能性があると述べている。このシステムでは、ミサイル1発で複数の標的に核弾頭を落とせる可能性がある。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中