NASAが月面に原子力発電所を建設へ 中国も100倍出力で追随、安全性は
小型の「原子力発電所」
このたび設計案の公募がはじまった月面での原子力システムは、この成果を引き継いだものだ。宇宙ポータルの『Space.com』は、いかにサイズを抑えるかが設計の鍵になるとみる。少なくとも部品の状態でロケットによる打ち上げ可能なサイズとすることが求められており、最大サイズは長さ約4メートル、直径約6メートル以下でなくてはならない。また、原子炉の総重量は6トン以下という制限がある。
このように原子炉は小型であるものの、地上にある既存の原発と同様、ウラン燃料を用いた核分裂反応をもとに電力を得るしくみだ。NASAは計画のなかで「原子炉(nuclear reactor)」との表現を用いているが、すでに複数の海外メディアが月面における「原子力発電所(nuclear power plant)」だと表現している。
昨年の計画時点で米CNBCは、「NASAと米エネルギー省は、月面および火星に原子力発電所を建設し長期的な探査計画の糧とすべく、業界から企画案を募集する」と報じた。『スペース.com』も今年11月30日、「2030年までにNASAが月面に原子力発電所を建設の意向」として取り上げている。
小型だが立派な原子力施設となれば、設計には細心の注意が求められる。こと定住者のいない月面では、万一の事故時には対応手段が限られることになる。英サン紙は、「エンジニアたちはまた、原子炉がメルトダウンに至らないよう冷却しておく方法も考えなければならない」と指摘する。月では昼夜の温度差が最大300℃近くになることから、「これは厄介な問題となる可能性がある」との見解だ。
各国が積極姿勢、安全性に疑義も
月面探査用の電源として原子力エネルギーは有望視されており、アメリカ以外では中国が興味を示している。計画は秘密裏に進められているが、関与した科学者のうち2名が原子炉のプロトタイプの設計が完成したと明かした。香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙が報じた。主要部品の一部はすでに製造されており、完成時の出力は1メガワットになるという。NASAが計画しているシステムの100倍に相当する。
米技術サイト『インタレスティング・エンジニアリング』はこの件を取り上げ、「中国の原子炉計画が内密に進められていることから、例えば打ち上げの失敗により放射性物質が軌道上に撒き散らされるなどの事故時などにおいて、政府の規制が行き届かないのではないかとする懸念が一部に存在する」と指摘している。
ほか、宇宙開発における原子力利用については、ロシアがメガワット級の原子炉を備えた輸送船を開発中、欧州宇宙機関も200キロワット級原子炉の地上テストを目指している。有望なエネルギー源として採用が進む反面、事故対応をどう想定するのかが課題となりそうだ。
Nasa's INSANE PLAN To Put A Nuclear Reactor On The Moon!