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宇宙天の川銀河の中心で約1000本もの謎のフィラメントが発見される
銀河中心のパノラマ画像 (I. Heywood/SARAO)
<銀河中心(天の川銀河の中心部)は、非常に観測しづらいが、20地点から収集した計200時間の観測データをつなぎあわせてパノラマ画像を公開した>
約2万5000光年離れた銀河中心(天の川銀河の中心部)は、光の波長の一部を遮断する濃い塵やガスに覆われており、非常に観測しづらい。
米ノースウェスタン大学の天文学者ファルハド・ユセフ-ザデー教授は、1980年代前半に初めて銀河中心で磁気フィラメントを発見した。このフィラメントは光速に近い速度で磁気を旋回させる宇宙線の電子からなるが、その起源などについては依然として謎に包まれている。
「全景をついに見ることができた」
ユセフ-サデー教授らの研究チームは、南アフリカ電波天文台(SARAO)の電波望遠鏡「ミーアキャット(MeerKAT)」が3年かけて20地点から収集した計200時間の観測データをつなぎあわせ、2022年1月25日、学術雑誌「アストロフィジカルジャーナル」で銀河中心のパノラマ画像を公開した。
この画像では、150光年にわたって伸びる約1000本ものフィラメントが確認できる。この規模はこれまでに見つかったものよりも10倍多い。ユセフ-サデー教授は「我々は長年、近視眼的な視点でそれぞれのフィラメントを研究していた」と振り返るとともに、「多くのフィラメントでいっぱいになった全景をついに見ることができた。これはフィラメントの構造のさらなる解明につながる分水嶺だ」とその成果を強調している。
フィラメントの構造についてはまだ謎が多い
研究チームは、「ミーアキャット」の観測データをもとにフィラメントの磁場などについても詳しく調べ、その研究成果を1月25日、学術雑誌「アストロフィジカルジャーナルレターズ」で発表した。
これによると、フィラメントから放出される放射線の変動は、超新星残骸(超新星爆発の後に残る星雲状の天体:SNR)のものとは異なっていた。つまり、この現象の起源はそれぞれ異なっていると考えられる。研究チームは「フィラメントは銀河中心の超大質量ブラックホール(SMBH)『いて座A*(エー・スター)』の過去の活動と関連しているのではないか」と考察している。もしくは、ユセフ-サデー教授らが2019年に銀河中心で発見した電波を発する巨大な泡と関連している可能性もある。
多くのフィラメントが観測されたことによって、フィラメントの統計的特性を解明できる。たとえば、フィラメントが磁化していることはすでに知られていたが、フィラメントに沿って磁場が増幅されるという共通の特徴があることが新たにわかった。
フィラメントの構造についてはまだ多くの謎が残されている。フィラメントは群れをなし、ハープの弦のように等間隔に離れているが、フィラメントがなぜ群れをなしているのか、どのように分かれ、等間隔で離れたのかについては明らかになっていない。また、フィラメントが時間の経過とともに移動したり変化したりするのか、なぜ電子がこれほど異常な速度で加速するのかといった疑問も残る。
研究チームでは、今後、それぞれのフィラメントの角度や強度、曲線、磁気の強さや長さ、方向、放射線のスペクトルなどのカタログ化をすすめ、近い将来、その研究成果を発表していく方針だ。
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