独政府「ウクライナ侵攻ならパイプライン停止も」 ロシアの武器が欧米側の切り札に
Germany, U.S. Threaten To Hit Putin's $11Bn Gas Pipeline If Russia Invades Ukraine
ノルド・ストリーム2の建造現場を視察したプーチン(2010年) Dmitry Lovetsky/Pool-REUTERS
<ロシアによる「欧州支配」の武器になると懸念されていた「ノルド・ストリーム2」が、ウクライナ危機でロシアを牽制する格好の切り札になる皮肉>
ロシア軍がウクライナ国境沿いに10万人規模の兵士を展開させるなど、緊迫感が高まっているウクライナ情勢をめぐり、もしロシアが実際に侵攻した場合には、天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」が制裁の対象になると、ドイツ外相が明らかにした。
ロシアとドイツを結ぶ総工費110億ドルのパイプライン(現在はドイツ規制当局の承認を待っている段階で未稼働)に対しては、以前からアメリカやEU域内の国々からも批判の声が上がっていた。ヨーロッパ大陸へのエネルギー供給が、ロシアの意向に大きく左右されるようになる懸念が強いためだ。
実際、各国の議員や評論家はこの事業について、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に「地政学的な武器」を手渡すことになると非難している。そうした議論の的となってきた全長約1200キロのパイプラインが今、プーチンがウクライナへの侵攻を指示するか否かを決める際の、大きな抑止力になるのではないかと期待されている。
AFP通信の報道によれば、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は1月27日、ウクライナ侵攻が現実になった場合、ドイツ政府はロシアに対する「強力な制裁パッケージ」を用意しており、そのなかには「ノルド・ストリーム2」も含まれると語った。
ドイツメディアによれば、ベアボックは「いつでも対話の準備はある」と述べたうえで、「ヨーロッパの平和的秩序の礎については、交渉の余地はない」と付け加えた。
「まだガスが流れていない」からこそ切り札に
アンゲラ・メルケル首相が率いたドイツの前政権はノルド・ストリーム2について、商業的な事業だと述べていたが、ドイツ国営メディアDW(ドイチェ・ヴェレ)によれば、ベアボックは以前から、このパイプラインの建設に反対してきたという。
ベアボックのコメントは、米国務省のネッド・プライス報道官による発言を受けたものだ。プライスは26日、戦争を回避するための外交ルートを模索するアメリカにとって、ノルド・ストリーム2は交渉の「切り札」になると述べていた。
「パイプラインは私たちの力になる。ドイツの力になる。大西洋の両側にある国々の力になる。なぜなら、ガスはまだ流れていないからだ」とプライスはNPR(アメリカの公共ラジオネットワーク)で語った。
「念のために言っておくが、ウラジーミル・プーチンの力にはならない」とプライスは続けた。「ロシアがウクライナに侵攻すれば、いずれにせよノルド・ストリーム2のプロジェクトは前進しない」