最新記事

宇宙

知ってた? 太陽系は「巨大な泡」の真ん中に浮かんでいる 3次元でマップ化

2022年1月19日(水)18時30分
松岡由希子

太陽系が中心に位置する「局所泡」のイラスト  ustak / STScI

<太陽系は、幅1000光年もの巨大な星間物質の空洞の中心部に位置している。この局所泡の3次元マップが作成された>

太陽系は「局所泡」と呼ばれる幅1000光年もの巨大な星間物質の空洞の中心部に位置している。局所泡は1970年代に初めてその存在が確認され、銀河系の星間物質に比べて約10分の1の低密度であることがわかっているが、どのようにして太陽系が真ん中に浮いているような状態で存在するようになったのかは明らかになっていない。

偶然、局所泡のほぼ中心部に太陽が位置するようになった

米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)と宇宙望遠鏡科学研究所(STScl)の研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測データを用いて、太陽から200パーセク(約652光年)以内の高密度ガスと若い恒星の位置、形状、動きを分析し、これまでで最も高精度な局所泡の3次元マップを作成した。一連の研究成果は、2022年1月12日に学術雑誌「ネイチャー」で発表されている。

この3次元マップでは、若い恒星や原始星が生まれつつある「星形成領域」がすべて局所泡の表面にあることが示された。これは、既知の7つの星形成領域や分子雲が局所泡の表面に存在することとも一致する。

また研究チームは、星形成領域の動きを遡って追跡した。その結果、約1400万年前から数百年の間に起きた15の超新星爆発が星間物質を押し出し、星形成に適した表面を持つ泡のような構造を形成したことがわかった。この局所泡は秒速約4マイル(約6.4キロ)のペースで現在も広がり続けている。

局所泡を作り出した最初の超新星爆発が起こったとき、太陽系は離れたところに位置していたとみられる。研究論文の共同著者でウィーン大学のジョアン・アウベス教授は「約500万年に太陽の軌道が局所泡の中に入り、偶然にもそのほぼ中心部に太陽が位置するようになった」と解説している。

スーパーバブルも3次元でマップ化する

「銀河系にはスーパーバブル(複数の超新星爆発や恒星風によって形成されたとみられる巨大な高温低密度領域)が広く分布しているのではないか」との仮説が1977年から提唱されてきた。

研究チームは一連の研究成果を根拠として、この仮説を支持する。もしスーパーバブルが銀河系で稀なものだとしたら、太陽が局所泡の中心部にある可能性は非常に低くなるためだ。「天の川は超新星爆発によって穴が開き、その周りに新しい星が形成される、穴の開いたスイスチーズのようなものではないか」と考察されている。

研究チームは今後、他のスーパーバブルについても3次元でマップ化する計画だ。スーパーバブルの位置や形状、大きさ、それぞれの関係性を把握することで、銀河系の構造や進化の解明などに役立つと期待が寄せられている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アルゼンチンGDP、第3四半期は前年比3.3%増 

ビジネス

テスラ、独で電池セル生産強化 10億ドル投資へ

ワールド

トランプ氏、入国制限を拡大 シリアなど7カ国やパレ

ビジネス

みずほFG、インドのアベンダスに60%超出資 最大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中