最新記事

オミクロン株

オミクロン株について現時点でわかっていること

2021年12月22日(水)16時30分
松岡由希子

デルタ株よりも感染拡大のスピードが速い REUTERS/Dado Ruvic/

<オミクロン株への感染が確認された国は2021年12月21日時点で106カ国。デルタ株よりも感染拡大のスピードが速い......など、現在わかっていることを整理した>

新型コロナウイルスの変異株B.1.1.529系統「オミクロン株」への感染が世界的に急拡大している。世界保健機関(WHO)によると、オミクロン株への感染が確認された国は2021年12月21日時点で106カ国にのぼる。

デルタ株よりもはるかに感染拡大のスピードが速い

オミクロン株の倍加時間(感染者数が倍になる時間)は1.5~3日で、デルタ株よりも感染拡大のスピードが速い。

11月27日にオミクロン株への感染者が初めて確認された英国では、すでにイングランド9州のうち8州でオミクロン株への感染者が過半数を占め、英ロンドンでは12月15日時点で新規感染者の83%がオミクロン株に感染した。

新型コロナウイルスへの集団免疫レベルが高い国でオミクロン株の感染が拡大しているが、このような急速な感染拡大が免疫回避によるものなのか、感染性の高さが起因しているのか、これら両方の要因の組み合わせによるのかについてはまだ明らかになっていない。

他の株に感染した人に再感染する確率が3倍高い

アメリカ国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長は、「オミクロン株には57カ所もの変異があり、もはや別のウイルスとして仕切り直さざるを得ない」とフランシス・コリンズ所長を鳴らす。

オミクロン株には、ヒトの細胞へ侵入するために必要な「スパイクたんぱく質」で37個のアミノ酸置換があり、そのうち15個はスパイクたんぱく質の受容体結合部位(RBD)にあることから、既存のワクチンや抗体医薬品の有効性について懸念されている。

オミクロン株が最初に検出された南アフリカ共和国での症例279万6982件をもとにオミクロン株への再感染リスクを分析した査読前論文では「オミクロン株はベータ株やデルタ株に比べ、他の株に感染した人に再感染する確率が3倍高い」ことが示されている。

スプートニクV、シノファームの十分な予防効果は期待できない

追加接種(ブースター)しなければ、既存のワクチンのオミクロン株への予防効果は十分に期待できない。米ヴィル・バイオテクノロジー社らの研究チームがまとめた査読前論文によると、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の「Ad26.COV2.S」(1回接種)、ロシアの「スプートニクV」、中国シノファームの「BBIBP-CorV」ではオミクロン株に対する中和活性がまったくなかった。

mRNAワクチンではオミクロン株に対して一定の中和活性が維持されているものの、モデルナの「mRNA-1273」で33分の1、ファイザーの「BNT162b2」で44分の1に低下している。

追加接種(ブースター)はオミクロン株に有効だ

新型コロナウイルスワクチンの追加接種はオミクロン株に有効であるとみられる。ファイザーは、12月8日、「BNT162b2」のオミクロン株への有効性に関する初期の研究結果を発表し、「2回接種でも重症化予防の効果は期待できる」としたうえで「3回接種によりオミクロン株に対する中和抗体値が25倍上昇する」と追加接種の有効性を説いている。

また、モデルナも、12月20日に発表した初期の研究結果で、「mRNA-1273」50マイクログラムの追加接種で約37倍、100マイクログラムで約83倍、オミクロン株に対する中和抗体値が上昇することを明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論

ワールド

北朝鮮、日米のミサイル共同生産合意を批判 「安保リ

ビジネス

相互関税「即時発効」と米政権、トランプ氏が2日発表

ビジネス

EQT、日本の不動産部門責任者にKKR幹部を任命
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中