最新記事

生物

透明な頭部、極めて珍しい深海魚「デメニギス」の姿が動画で撮影された

2021年12月17日(金)16時50分
松岡由希子

目のようにみえる2つの小さなくぼみは嗅覚器官で、頭頂部に向かって緑の光を放つ2つの球体が眼球だ Ezra Weller-wikipedia

<姿がとらえられることは極めて稀な深海魚デメニギスの泳ぐ姿が撮影された。2004年まで、透明な頭部の存在は知られていなかった...... >

透明なドーム状の膜で覆われた頭部をもつ珍しいデメニギスの姿がとらえられた。
米モントレー湾水族館研究所(MBARI)は、2021年12月9日、遠隔操作無人探査機(ROV)「ベンタナ」がモントレー峡谷の水深約650メートル地点で撮影した動画をツイッターの公式アカウントで公開している。

体長15センチのデメニギスは、ベーリング海から日本、カリフォルニア半島にわたる太平洋北部海域に分布し、水深600~800メートルの中深海で生息している。

その姿がとらえられることは極めて稀だ。モントレー湾水族館研究所では、遠隔操作無人探査機「ベンタナ」と「ドック・リケッツ」を遠隔操作してこれまでに5600回以上の探査で2万7600時間以上の動画を撮影したが、デメニギスと遭遇したのはわずか9回にとどまる。

2004年まで、透明な頭部の存在は知られていなかった

デメニギスは、眼球にも特徴がある。目のようにみえる2つの小さなくぼみは嗅覚器官で、頭頂部に向かって緑の光を放つ2つの球体が眼球だ。眼球は通常、真上に向けられ、上方から差し込むわずかな光でできる影をとらえて、動物プランクトンやクダクラゲなどの餌生物を見つけだす。

眼球の緑の色素は、海面からの太陽光を除去する働きがあるとみられる。デメニギスは、餌生物を見つけると、その行方を追えるよう眼球を回転させて視点を前方へと動かし、これを捕食する。

デメニギスについては、個体数を含めて、まだ多くの謎が残されている。デメニギスが初めて記述されたのは1939年であったが、漁師によって捕獲された当時の標本はドーム状の透明な頭部が損傷していた。そのため、モントレー湾水族館研究所が初めて自然の生息地でデメニギスを観察した2004年まで、透明な頭部の存在は知られていなかった。現時点でも、デメニギスになぜ透明な頭部があるのかは、明らかになっていない。

New deep-sea sighting: The barreleye fish has a transparent head and tubular eyes

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中