『中国の民主』白書と「民主主義サミット」
中国は胡錦涛政権における2008年8月8日に北京五輪(オリンピック・パラリンピック)を開催することになっていたが、当時はチベット族を中心とした暴動と鎮圧が激しく、国際社会は北京五輪を支持すべきか否かに揺れていた。
そのため胡錦涛としては「中国がいかに民主的であるか」そして「中国には中国の民主があるのだ」ということを国際社会に向けて発信する必要に迫られていた。
しかし2008年3月10日にチベット自治区ラサ市でチベット独立を求めて起きたデモをきっかけとして、いわゆる「チベット動乱」が発生し中国当局が激しい鎮圧をすると、国際社会は北京五輪ボイコットを叫んで騒然とした。「中国の民主」に関する一連の白書は、こういった動きを未然に防ぐために出されたものだったが、結局国際世論はボイコットするか否かで大きく揺れた。
そもそも胡錦涛はかつてチベット暴動を武力で鎮圧したことを高く評価されて、鄧小平により「江沢民の次に国家主席になれ」と任命された人物だ。
2008年、いち早く北京五輪サポートの声を上げた日本
そのような中、いち早く北京五輪をサポートすべきだという声を上げたのは日本である。
2008年4月2日、当時の日本の福田首相は「人権にかかわるようなことがあるならば、懸念を表明せざるを得ない」と述べる一方で、北京オリンピックの開会式に出席するのかどうかについて聞かれると「中国が努力している最中に参加するとかしないとか言うべきではない」と発言したことで有名である。
そして5月6日~10日、胡錦涛を国賓として日本に招き、天皇陛下に謁見するところまで持って行った。
天安門事件発生後の対中経済封鎖をいち早く解除させて、その後の中国経済の成長を可能ならしめた日本と同じく、この時もまた日本が中国(=人権弾圧をする中国共産党政権)に救いの手を差し伸べたのだ。
中国はこの味を十分に知っている。
だからこそ今般の北京冬季五輪の外交的ボイコットに関して、12月10日にコラム<中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること>に書いたような現象が起きるのである。日本をテコに使うのは中国の常套手段だ。そのために日本国内に多数の親中議員を養成することに中国は(建国以来)余念がない。「侵略戦争への贖罪意識」を利用すれば、日本は中国の思う方向にコントロールできると、中国は高を括(くく)っている。
中国が出した『アメリカ民主の状況』白書
しかし、アメリカに対してはそうはいかない。