最新記事

中国

『中国の民主』白書と「民主主義サミット」

2021年12月14日(火)16時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国は胡錦涛政権における2008年8月8日に北京五輪(オリンピック・パラリンピック)を開催することになっていたが、当時はチベット族を中心とした暴動と鎮圧が激しく、国際社会は北京五輪を支持すべきか否かに揺れていた。

そのため胡錦涛としては「中国がいかに民主的であるか」そして「中国には中国の民主があるのだ」ということを国際社会に向けて発信する必要に迫られていた。

しかし2008年3月10日にチベット自治区ラサ市でチベット独立を求めて起きたデモをきっかけとして、いわゆる「チベット動乱」が発生し中国当局が激しい鎮圧をすると、国際社会は北京五輪ボイコットを叫んで騒然とした。「中国の民主」に関する一連の白書は、こういった動きを未然に防ぐために出されたものだったが、結局国際世論はボイコットするか否かで大きく揺れた。

そもそも胡錦涛はかつてチベット暴動を武力で鎮圧したことを高く評価されて、鄧小平により「江沢民の次に国家主席になれ」と任命された人物だ。

2008年、いち早く北京五輪サポートの声を上げた日本

そのような中、いち早く北京五輪をサポートすべきだという声を上げたのは日本である。

2008年4月2日、当時の日本の福田首相は「人権にかかわるようなことがあるならば、懸念を表明せざるを得ない」と述べる一方で、北京オリンピックの開会式に出席するのかどうかについて聞かれると「中国が努力している最中に参加するとかしないとか言うべきではない」と発言したことで有名である。

そして5月6日~10日、胡錦涛を国賓として日本に招き、天皇陛下に謁見するところまで持って行った。

天安門事件発生後の対中経済封鎖をいち早く解除させて、その後の中国経済の成長を可能ならしめた日本と同じく、この時もまた日本が中国(=人権弾圧をする中国共産党政権)に救いの手を差し伸べたのだ。

中国はこの味を十分に知っている。

だからこそ今般の北京冬季五輪の外交的ボイコットに関して、12月10日にコラム<中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること>に書いたような現象が起きるのである。日本をテコに使うのは中国の常套手段だ。そのために日本国内に多数の親中議員を養成することに中国は(建国以来)余念がない。「侵略戦争への贖罪意識」を利用すれば、日本は中国の思う方向にコントロールできると、中国は高を括(くく)っている。

中国が出した『アメリカ民主の状況』白書

しかし、アメリカに対してはそうはいかない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジアラムコ、2油田で減産 ホルムズ海峡封鎖を受

ワールド

原油先物22年半ば以来の高値、北海ブレント過去最大

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ700ドル安、原油高騰でイ

ビジネス

IEAが石油備蓄放出呼びかけ、G7会合 片山財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 8
    保険料を支払うには収入が少なすぎる...中国、進まぬ…
  • 9
    最後のプリンスが「復活」する日
  • 10
    【原油価格100ドル突破】「イランの石油が供給危機を…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 3
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 8
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中