最新記事

エネルギー

日本政府「原発45基分を洋上発電」 意欲的な政策を外資が虎視眈々と狙うワケ

2021年12月6日(月)13時35分
前田雄大(EnergyShift発行人兼統括編集長) *PRESIDENT Onlineからの転載

イギリスがなぜ異例な対日姿勢に転じたのか。気候変動対策を推進したいという純粋な思いだけではない。イギリスが注力している洋上風力発電を日本市場でも展開させたいという思惑が見え隠れしている。

そもそも洋上風力は、1990年にスウェーデンの洋上に設置された風車が始まりとされ、その後、欧州各地で設置が相次いだ。イギリスは北海原油などの資源に恵まれていたことから他国と比べ出だしは遅れたが、イギリス政府は2000年初頭から再エネに注目。特に洋上風力に注力する政策を推進してきた。

現時点で2200基以上の風車が回り、電力の1割を賄うほどに成長した。洋上風力の発電量は世界トップだ(日本は10番目で、圧倒的に後れを取っている)。

世界の洋上風力発電容量(国別)

出典=World Forum Offshore Wind「Global Offshore Wind Report 2020

普及の要因としては、周辺海域が遠浅で洋上風力の適地が多かったこと、それらの海域は風況がよく最適な立地であったことが挙げられる。規模の経済が利いて洋上風力の発電コストが低下し、同時並行でイノベーションも進展する好循環が生まれたのも大きい。

「成長のエンジン」を担うまでに成長した風力発電産業

イギリスにとって脱炭素分野は、いまや「成長のエンジン」になっている。2020年11月にイギリス政府が発表した経済復興パッケージ「Green Industrial Revolution」(緑の産業革命)は、脱炭素関連産業を成長させることを通じて経済成長を達成し、雇用を生み出し、カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させるという内容になっている。

ここでジョンソン政権が主軸として強調したのが洋上風力であった。無論、イギリス企業が単独で開発を進めているわけではなく、欧州の多くの企業が参画している。そうした欧州域内の投資を受け入れながらイギリスの洋上風力関連産業は着実な成長を見せ、世界有数の洋上風力発電関連のコンサルティング企業やエンジニアリング、製造企業を有するようになった。

国内の雇用の大規模創出にも成功し、今後5年間の民間部門による投資は608億ポンド(約9兆円)にのぼると見積もられている。イギリス政府が描いたストーリーが着実に現実のものになりつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス対米輸出が9月に43%急増 製薬会社が関税前

ワールド

米エネルギー省、戦略石油備蓄に100万バレル原油購

ワールド

北朝鮮が東方に弾道ミサイル発射、5月以来 韓国軍発

ワールド

コロンビア、米国との対立打開へ会談 関税はトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中