最新記事

クーデター

ミャンマーのアウンサンスーチー、禁錮刑4年から2年に減刑 欧米など反発

2021年12月7日(火)07時44分
アウンサンスーチー

関係筋によると、ミャンマーの民主化指導者アウンサンスーチー氏が、扇動罪と自然災害管理法違反の罪で禁錮4年の刑を言い渡された。ネピドーで2019年1月撮影(2021年 ロイター/Ann Wang)

ミャンマーの民主化指導者アウンサンスーチー氏(76)に対して6日、扇動罪と自然災害管理法違反の罪で禁錮刑が言い渡された。国営MRTVの報道によると、当初の刑期は4年だったが、軍事政権の恩赦により2年に減刑された。

大統領を務めていたウィンミン氏には禁錮4年の刑が言い渡された。2月1日の軍のクーデターで拘束された両氏に対する初の判決となった。

両氏は刑務所には送られず、現在拘束されている場所で服役することになるという。

両氏は容疑を否認。スーチー氏の支持者は政治的な動機に基づく裁判だと非難している。

スーチー氏は、汚職や国家機密法違反など、十数の容疑で訴追されており、最大で禁錮100年を超える刑を言い渡される可能性がある。

軍事政権は、独立した裁判所による公正な手続きだと主張。西側諸国はスーチー氏の解放を求めている。

訴訟はメディアには公開されておらず、スーチー氏の弁護士もメディアとの接触を禁止されている。

軍はスーチー氏をどこで拘束してるのか明らかにしておらず、今回の判決で同氏を巡る環境に変化が生じるのかどうか現時点で不明だ。

米国はスーチー氏が有罪判決を受けたことを批判し、即時釈放を求めている。ブリンケン米国務長官は声明を発表し、「軍事政権がスーチー氏に不当な有罪判決を下したことや、民主的に選出された議員らに弾圧を加えていることは、民主主義と正義に対する冒とくだ」と批判した。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)も同様に、この判決を強く非難するとし「EUは、全ての政治犯および恣意的に拘束されている人々の、即時かつ無条件の釈放を改めて求める」と述べた。

国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、スーチー氏の訴追はでっち上げだとし、今回の判決は全ての反対勢力を排除し、自由を抑圧する軍の決意を改めて示したと指摘。同団体のミン・ユー・ハー氏は声明文で「裁判所の滑稽で腐敗した判決は、軍のクーデター以来1300人以上が殺害され、数千人が逮捕されてきた恣意的な処罰の破滅的な過程の一部だ」と訴えた。

「ASEAN(東南アジア諸国連合)人権に関する国会議員の会(APHR)」は、裁判の結果にだまされる者はいないと表明。「クーデターの日以来、アウンサンスーチー氏や他の数十人の拘束された国会議員に対する訴追は、軍事政権が違法な権力掌握を正当化するための言い訳にすぎないことが明らかになっている」とする声明を発表した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由
・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中