最新記事

毎日30分の瞑想で認知症患者の脳に変化、認知障害予防に期待 インド調査

2021年12月7日(火)16時00分
松丸さとみ

灰白質増加、集中力も改善

アクティビティを半年間続けられたのは、48人中32人だった。またコロナ禍が原因で、実験終了後にMRIを受けることができたのは22人のみだった。そのため、実験終了後のデータは、32人分の認知機能テストと、22人分のMRI分析を用いた。

実験前では、瞑想グループと瞑想以外のグループの間には、認知機能テストについても、MRIについても、大きな違いは見られなかった。

実験後は、瞑想グループで灰白質の容積が著しく増えており、とりわけ集中力や、目標に向けた意思決定を司る左前頭前野での増加が顕著だった。また、記憶を司る左海馬などでも灰白質の容積が増えた。一方で、脳後方の灰白質は容積が縮小した。

研究チームはこうした結果から、瞑想は、「トップダウン制御」(目標に向かって適切に注意を向ける)を促す脳の領域を強化し、刺激に対する反応を抑える効果があるようだとしている。

ただし、瞑想後のMRIでは、集中力や実行機能、記憶を司る脳の領域での灰白質が増加するなど、前向きな変化が示されたにもかかわらず、認知機能テストでは大きな改善は見られなかったという。とはいえ研究チームは、特定のテスト項目については集中力が改善した様子が観察されたと論文に記している。

科学技術省の発表文でゴーシュ博士は、目を覚ましているほとんどの時間を、人はとりとめもない考え事をして過ごしている、と指摘。とりわけネガティブなことばかり考えている場合は脳にダメージを与え、早期老化やアルツハイマー病にかかりやすくなる可能性もあると述べている。

瞑想は、湧き上がってくる思考に対して判断したり反応したりせず、意図した目標に意識を向け直すように行う。そのため集中力を高め、目標に向けた行動を強化しつつ、とりとめもない思考や感情的な反応を減らすような脳のネットワークを活性化する、とゴーシュ博士は説明している。

瞑想が認知障害や認知症にどのような影響があるかについての調査は、まだ始まったばかりだ。今回の結果を受けゴーシュ博士らのチームは、今後はさらに参加者人数を増やして、瞑想を長期間実施するような研究を行いたいとしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、3月15.5万人増に加速 不確実

ビジネス

任天堂、「スイッチ2」を6月5日に発売

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中