「小さな死のリンゴ」 下に立つだけで有害、ギネスが認めた世界一危険な樹木とは
誤って食べた医師は
危険な樹としてにわかに話題に上ることもあるマンチニールだが、その毒性は地元の人々以外に広く知られているわけではない。近年では旅行者が誤って食用してしまう事態が発生している。リンゴに似た外観に加え、熟したスモモのように甘い香りを漂わせることから、毒性を知らない人々が興味をもって口に運んでしまうことがあるようだ。医師でさえその被害に遭っている。
イギリスの医学誌『BMJ』では、実際に誤食してしまったという放射線顧問医師の体験談を確認することができる。カリブ海に浮かぶトバゴ島でのリゾートに出かけたというこの医師は、島で見かけたマンチニールの果実に興味を惹かれ、思わず手に取りかじってみたという。
「甘みがあって美味しかった」と彼女は一口目の感想を振り返るが、問題はそこからだった。「しばらく経つと口のなかにピリピリとした感触が起きはじめ、やがてそれは焼け付くような痛みへと変わり、引き裂かれるような感覚と喉の締めつけを覚えた」という。彼女に勧められ一緒に食べた友人も、同様の症状を示した。
数時間後には痛みは耐え難いまでになり、喉のなかにまるで大きな塊が詰まっているかのような錯覚さえ覚えたという。固形物はほとんど摂取できない状態となり、痛みは8時間かけてようやく弱まる気配を見せはじめた。医師は自身の経験を「恐ろしいものだった」と振り返っている。自身の体験をBMJ誌上で公開し、「マンチニールの樹は深刻な医療上の問題を引き起こすことがある」として注意を喚起している。
16世紀から現代に至るまで、マンチニールはさまざまな形で健康被害をもたらしてきた。南フロリダやカリブ海沿岸などを訪れる機会があれば、リンゴに似た樹には不用意に近づかないように気をつけたい。