「デルタ株の脅威など児戯に等しい」変異株オミクロン...いま分かっていること
英政府は南アからの渡航制限に踏み切った(ロンドンのヒースロー空港) TOBY MELVILLEーREUTERS
<世界がこれほど恐れなければならない理由は何か。現時点で分かっていること、懸念されていることをまとめた>
南アフリカで最初に確認された新型コロナウイルスの新たな変異株に、世界中の保健当局が警戒を強めている。
この最新の変異株に比べれば、デルタ株の脅威など児戯に等しいと言う科学者もいる。既に多くの国が渡航制限などの措置を講じている。
世界保健機関(WHO)は11月26日、これを「懸念される変異株」に指定し、ギリシャ文字のアルファベットから「オミクロン」と命名した。
オミクロン株は極めて感染性が高く、既存のワクチンが効かない可能性があるとの情報を受け、世界中の証券市場で株価が急落した。
この変異株について、分かっていることをまとめてみた。
――なぜこれほど懸念されている?
変異の数が多いからだ。オミクロン株はウイルスが人間の細胞に取り付くときに使うスパイクタンパク質の遺伝子が30カ所以上も変異している。デルタ株の2倍に当たり、最初に中国で出現したウイルスとは似ても似つかないものになっている。「これまでに目にした最も甚だしい変異だ」と、英ワーウィック大学のウイルス学者、ローレンス・ヤングは言う。
しかも、その変異は「これまでに目にした最も懸念すべきもの」だと、英健康安全保障庁の主任顧問のスーザン・ホプキンズは警告する。変異数が多いため懸念材料も多く、「感染性や伝播性を高める変異、ワクチンによる免疫や自然免疫を擦り抜ける変異」を持つ可能性があるからだ。
――デルタ株より感染力が強い?
遺伝子の変異から非常に感染性が高いとみられているが、まだ確証はない。危惧すべき兆候はあるが、デルタ株より感染力が強く、重症化率も高いかどうかははっきりしない。
それでも油断は禁物だ。南アではここ数週間に感染者が急増。その圧倒的多数は、最大都市ヨハネスブルクを含むハウテン州に集中している。オミクロン株による流行とは断定できないが、専門家はその可能性が高いとみている。
他の変異株と同様、オミクロン株も感染しても症状が出ないケースがある。
――ワクチンは効かない?
これについても、まだ明確な答えはない。専門家によれば、ワクチンが全く効かないことは考えにくく、過度に恐れるのはまだ早い。
これまでの変異株に対してワクチンはおおむね有効だった。ただし、オミクロン株ほど変異の多い株は出現していなかったことも事実だ。