最新記事
リモートワーク

リモートワークのパソコン画面、上司から丸見え...米企業の60%が監視ソフトを導入

2021年11月19日(金)18時36分
青葉やまと

英ベンチャーのSneek社が提供するツールは、ウェブカメラを利用して最大1分ごとに従業員の顔写真を撮影する機能が売りだ。撮影された写真は「ウォール・オブ・フェイス」と呼ばれる顔写真一覧に投稿され、チーム内の全員に共有される。いつでもビデオ通話を始められる環境を目指したコラボレーション・ツールだが、離席監視の側面も否めない。

Slackなどのコラボレーション・ツールでも、会社側などワークスペースのオーナーは適法と認められた場合、ワークスペース内の個人間のやり取りをダウンロード可能となる。ワシントン・ポスト紙は、少なくともアメリカでは従業員間のコミュニケーションを監視することが適法と認められており、Slackがリクエストを拒否する可能性は低いと指摘する。

現状では規制ほぼ皆無

自宅作業中の監視については、アメリカでも倫理上の問題が指摘されはじめている。ワシントン・ポスト紙は、会社側が「合法的に監視」する手段として、「キーボード、ウェブカメラ、メール、メッセージアプリからデータを収集する権利」を保有しているはずだと述べ、注意を促している。

アメリカとイギリスを含む一部の国と地域では厳格なロックダウンが実施されて以来、社外での勤務実態を把握したいという雇用側のニーズが高まっている。リモート従業の監視に特化したソフトウェアを開発するある企業は、とくにデルタ株の出現以降、監視機能について世界中で高い需要があると証言している。

デラウェア州などアメリカの一部の州では、このような監視ソフトを導入する際、従業員に対して書面で通知することを義務付けている。しかしそれ以外の州とイギリスでは、現在のところ従業員に内密にリモート監視を行っても違法ではない。

米ニュースサイトの『ZDNet』はイギリスにおいて、自宅のプライバシー保護を求める声が高まっていると報じている。労働組合のプロスペクトは、リモート会議中を除くウェブカメラによる監視を違法とするよう求めている。英公共機関の情報コミッショナーオフィスは、自宅か職場かを問わず、監視ツールの導入前に従業員に通知するようアドバイスしている。

自宅作業はストレスの少ない合理的なワークスタイルとして歓迎されているが、見えないところでプライベートな情報が筒抜けになる可能性もはらむ。従業員側にもある程度の自衛意識が必要なのかもしれない。

Your boss could be watching right now. How employers are using software to keep tabs on workers.

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中