最新記事

寄生虫

突然の激しい発作に意味不明の言葉──原因は20年前に脳に侵入したサナダムシの◯◯だった

Symptoms of Tapeworm in the Brain Explained as Man Diagnosed After Seizures

2021年11月18日(木)18時00分
ロバート・リー

腸内にサナダムシを寄生させている人は、便に混じってサナダムシの卵も排泄する。この人が排便後に手を洗わずに調理をしたり、調理済みの食べ物に触れたりすれば、ほかの人にも感染を広げることになる。

卵が口から入り、孵化した幼虫がシストを形成すると、その後は何カ月、さらには何年も休眠状態を保っておとなしくしている。症状が出るのは通常、シストが死んで腐敗し、有害物質が滲み出たときだ。それによりシストの周りの組織が炎症を起こして腫れ上がり、周辺の部位を圧迫して、さまざまな症状を引き起こす。

38歳の男性の場合、体内にサナダムシの卵が入ったのは20年前だと、医師たちは推測している。

「症状の特徴、発作の前日まで健康だったこと、グアテマラの農村部に在住していた経歴から、神経嚢虫症が最も強く疑われた」と、論文は述べている。

神経嚢虫症は途上国に多い疾患だが、CDCの推定によると、アメリカでも毎年新たに約1000人が発症して入院している。報告件数が特に多いのはニューヨーク、カリフォルニア、テキサス、オレゴン、イリノイ州だ。

途上国では飲み水に注意

診断のつかない症状に苦しむ患者が神経嚢虫症と判明したケースが、ここ数年で何例か報告されている。突然割れるように頭が痛み、強烈な眠気に襲われ、一時的に意識を失った後、診断のつかない症状が次々に出たテキサス州の男性もその1人だ。

治療としては、抗寄生虫薬と抗炎症薬の併合投与が有効な場合もあるが、重篤なケースでは手術でシストを取り除かなければならない。対症療法にすぎないが、発作を抑えるために抗てんかん薬が処方されることもある。

予防のためには、トイレから出た後やおむつを替えた後の手洗いの励行など、特に食品を扱う際は衛生管理を徹底するよう、CDCは呼びかけている。また、生野菜はよく洗い、皮をむくよう奨励している。

途上国に旅行するときには水の汚染にも注意が必要だ。飲み水にはミネラルウォーターか一度沸騰させた湯を使うこと。ミネラルウォーターが買えないような奥地に旅するなら、携帯用浄水器と水質浄化用のヨウ素錠剤を持って行くよう、CDCは推奨している。

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中