最新記事

遺伝子

「ほこりのような役に立たない斑点」は、すべての脊椎動物に共通するゲノムの構成要素だった

2021年11月15日(月)17時00分
松岡由希子

アゴヒゲトカゲの小さなマイクロ染色体が、大きなマクロ染色体の間に集まっている Image: Shayer Alam.

<鳥類と爬虫類ではマイクロ染色体が同じで、哺乳類は進化の過程で、マイクロ染色体を吸収したと思われることがわかった>

鳥類やカメ、ヘビ、トカゲなどの爬虫類の多くは、マクロ染色体とともに「マイクロ染色体」と呼ばれる多数の微小な染色体で構成された核型を持つ。染色体の間に散らばったちいさなほこりの斑点のようにも見えるマイクロ染色体は当初、染色体の劣化した断片だと考えられていた。

豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)やラトローブ大学らの研究チームは、トカゲ、ビルマニシキヘビ、ミシシッピ鰐、アオウミガメなどの爬虫類、ニワトリ、イヌワシ、エミューなどの鳥類、哺乳類のカモノハシ、コアラ、ヒトといった様々な脊椎動物を対象に、最新のDNA配列解析技術を用いてマイクロ染色体のDNA配列を整理し、それぞれを比較した。一連の研究成果は2021年11月1日、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表されている。

microsoftteams-image_19_4.jpg

すべての鳥類と爬虫類ではマイクロ染色体は同じだった Photo: Aurora Ruiz-Herrera.

マイクロ染色体はすべての鳥類と爬虫類で同じだった

これによると、鳥類と爬虫類ではマイクロ染色体が同じであった。また、これらのマイクロ染色体は、脊椎動物と共通の祖先をもち、6億8400万年前に脊椎動物から分岐した脊索動物のナメクジウオとも同じであった。つまり、マイクロ染色体は古代動物のゲノムの要素であったと考えられる。

一方、哺乳類では、染色体の一部が複数のマイクロ染色体と並ぶカモノハシを除き、マイクロ染色体が完全に消失していた。有袋類やヒトを含む有胎盤哺乳類は、進化の過程で、マイクロ染色体を吸収し、混在させたとみられる。

研究論文の責任著者でラトローブ大学のジェニファー・グレイブ教授は「ヒトやその他の哺乳類の染色体は多くの『ジャンクDNA』で膨れ上がり、ごちゃまぜになっている」と解説する。

MicrochromosomesChart.jpg

マイクロ染色体は鳥類とヘビ、トカゲ、鳥、ワニ、カメで一貫して存在しているが、哺乳類ではより大きな染色体に混在している クレジット:Paul Waters

哺乳類の染色体は、「ジャンクDNA」で膨らんでいる

また、マイクロ染色体を細胞学的に観察した結果、物理的に相互作用しあう核の中心にマイクロ染色体が集まる傾向があった。何らかの機能的一貫性を示すものとみられる。

研究論文の筆頭著者でニューサウスウェールズ大学のポール・ウォーターズ准教授は「このような奇妙な動きは大きな染色体にはない」と指摘する。

一連の研究成果の意義について、グレイブ教授は「人間や他の哺乳類の染色体が、ノーマルというわけではなく、機能が特定されていないたくさんの「ジャンクDNA」で膨らみ、混ぜ合わされている。様々なゲノムを持つ哺乳類の種がなぜこれほど多く地球に生息しているのかを解明する一助になるだろう」と評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、内需拡大へ消費促進策 所得向上など

ビジネス

消費者マインド2月は7年ぶり高水準、物価見通しが低

ビジネス

金が1.4%反発、中東紛争拡大で安全資産に買い

ワールド

韓国国会、対米投資特別法案を12日に可決へ 与野党
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中