白黒くっきりのジャイアントパンダ、実は保護色だった 国際研究
6つの手法で分析 背景との同化はネズミより得意
研究内容の詳細を紹介すると、チームは6つの解析手法でパンダと背景の同化性能を評価している。第1に人間の主観的な視覚において、自然生息地の遠景から捉えた写真では、近景での観察時よりも背景と同化しやすいことを確認した。
第2から第4の検証では、定量配色解析(QCPA)と呼ばれるツールで分析を行い、パンダの体表の色と自然生息地の背景色の傾向を比較した。輝度の分布や、一つの色が連続して占める領域の広さ、当該色がパンダ本体あるいは背景に占める割合などを比較している。いずれも、パンダと背景のパターンが非常に似ていることを示す結果となった。
第5の検証では色ではなく輪郭に着目し、毛皮によるぼかし効果を検証した。長い毛によって、本来の体表と直行する方向に偽の輪郭が生み出される。この影響は近くで見た際には限定的だが、最低12メートルから優れた効果を現し、50メートル以上で最大の同化効果を生むことがわかった。
最後にチームは、体色と背景の色空間がどれほど似ているかを、代表的な14種の生物と比較した。結果、背景との色の近さだけで論じるならば、ジャイアントパンダは全身茶色のスナネズミの一種よりも見つけにくいという結果になっている。あくまで大きさを無視した比較ではあるが、遠景での見つけにくさを高めるもうひとつの武器となっているようだ。
また、派手な警告色を有する種と比較すると、背景との一致度はより際立って高い。従来パンダの配色の理由として、有毒生物がもつ派手な警告色に似せ、捕食者であるトラや犬科のドールなどを遠ざけるとする見解があった。今回の研究結果はこれに異を唱えるものとなりそうだ。
目立ちやすい「神話」覆す
研究チームは研究の意義について、「ほとんどの哺乳類は一般的に茶色系の単調な色彩をしているが、ごく一部にはよく知られた例外があり、進化上なぜそれが必要とされたかの理由づけが求められ」ていたと説明する。
哺乳類のうち非常に目立つ白黒の体色をもっているのは、ジャイアントパンダやシャチ、そしてシマウマなど、ごく一部に限られる。このパターンは生物学者たちを当惑させてきた。
これまでにも各種仮説は存在したが、はっきりとした理由づけは確定していなかった。今回の研究のように背景との区別を難しくするという説のほか、前述のような警告色説や、冷えやすい手足を黒とすることで熱の吸収効率を高めているのではないかとする考え方などがある。
今回の研究により、他の説のような効果を否定するところまではいかずとも、少なくとも保護色の効果をもたらしていることが解明されたことになる。チームを主導したノケライネン博士研究員は、「(他の生物との)比較結果は、自然の生息地においてジャイアントパンダがあからさまに目立つという神話を完全に覆すものです」と述べている。
白黒で目立ちやすいパンダだが、動物園を訪れた際は少し離れた場所から観察してみると、また違った印象を得ることができるかもしれない。