最新記事

飢餓

アフガニスタンの小児病院で25人が餓死、医師は無給

25 Kids at Afghan Hospital Died of Malnutrition in 2 Months, Staff Working Without Pay

2021年11月9日(火)21時34分
アンナ・カールソン

飢餓に苦しむアフガニスタンの子供 euronews/YouTube

<タリバン政権の機能不全と外国政府からの援助停止が、飢饉寸前のこの国を「破滅」に追い込もうとしている>

アフガニスタンの首都カブールの中核的な小児病院で亡くなる子どもの数は、この国で急速に進行する栄養失調の深刻さを示している。AP通信が報じた。

国連の世界食糧計画(WFP)は11月8日、ほとんど飢饉に近い食糧不足に苦しむアフガニスタン国民の数は870万人に達し、2021年初頭の数字と比較しても300万人増加していると報告した。この週末にアフガニスタンを訪れたWFPのデイビッド・ビーズリー事務局長は、「破滅的な状況だ」と述べた。

飢饉寸前の食糧不足によって、カブールのインディラ・ガンディー小児病院に運ばれる栄養失調の子どもの数は増える一方だ。地方の医療センターでも、世界各国からの資金援助が途絶えた結果、限定的な医療サービスしか提供できず、病院そのものが閉鎖を迫られるケースも出てきている。栄養失調に苦しむ子どもを抱える家族が、支援を受けるのも困難になる。

医師のサラフディン・サラーはAP通信の取材に対し、この2カ月間に病院に運ばれてきた子どものうち、少なくとも25人が死亡したと証言した。「病院の職員の大半は、医師や看護師から清掃スタッフに至るまで、3カ月は給料を受け取っていない」

8月にイスラム主義組織タリバンが全土の実権を掌握した後、アメリカをはじめとする西側諸国がアフガニスタンへの財政援助を打ち切ったため、同国の経済状況は急激に悪化している。アフガニスタン政府の外貨準備も、国外に預けられているためタリバンはアクセスできない。多くの職員は給与ももらえず無給で働いている。

AP通信はさらに、以下のように報じている。

記者がインディラ・ガンディー小児病院を訪れた11月8日、栄養失調患者専用の病室には18人の子どもが入院していた。この専用病室には新しい患者が週に約30人は送られてくると、看護副部長のジア・モハメドは言う。「2、3カ月前から、栄養失調の患者が目に見えて増えた」

WFPは8日、飢饉の瀬戸際にある人々の数が、世界43カ国で4500万人に達したと発表した。この数字は直近の調査時の4200万人と比べて上昇している。この増加分の大半はアフガニスタンだ。

アフガニスタンの全人口の60%にあたる2400万人が、飢餓に苦しんでいる。さらに、5歳未満の子ども約320万人が年末までに急性の栄養失調に陥るとの予測もある。

2021年に入ってアフガニスタンで発生した深刻な干ばつも、事態を悪化させた。この国では食料を買う金すらない人が増加している。

厳しい冬が近づく中、WFPはアフガニスタンの人々に食料支援を行うため、物資の供給を急いでいるが、援助活動の費用をまかなうにも資金が必要だ。

(翻訳:ガリレオ)

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中