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脳進む「脳をコンピュータとつなぐ技術」、1分あたり90文字を入力
脳にシリコン微小電極を埋め込みカーソルを移動させて文字を書く「マインドライティング」 YouTube
<脳をコンピュータとつなぎ、脳の神経細胞が発する電気信号をコンピュータに伝える「ブレイン-コンピュータインターフェイス(BCT)」の開発が進んでいる>
米スタンフォード大学、ブラウン大学、マサチューセッツ総合病院らの共同研究チーム「ブレインゲート」では、脊髄損傷や脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などにより上肢が動かなかったり、話せなくなったりした人のコミュニケーションを回復させる手段として、脳をコンピュータとつなぎ、脳の神経細胞が発する電気信号をコンピュータに伝える独自の「ブレイン-コンピュータインターフェイス(BCT)」の開発に取り組んでいる。
被験者3名の運動野にシリコン微小電極を埋め込んだ
2017年2月に発表した研究では、被験者3名の運動野(運動機能と関連する大脳皮質)にブレイン-コンピュータインターフェイスを埋め込み、これを用いてアルファベット文字を表示したコンピュータ画面上のカーソルを移動させ、特定の文をタイピングする実験を行った。この技術を「マインドライティング」と呼んでいる。
被験者のうち最も入力速度が速かったのは、2007年に脊髄を損傷し、首から下がほとんど動かなくなった右利きの63歳(2016年当時)の男性「T5」だ。1分あたり36.1文字を入力した。「T5」の運動野の2か所に96個の電極が付いたシリコン微小電極が埋め込まれており、右手と右腕の動きを制御する運動野の領域で発火する神経細胞からの信号は、これらの電極でとらえられ、コンピュータへと送られる仕組みとなっている。
研究チームは、より速いコミュニケーション手段をさらに追究し続け、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いて手書き動作の意図を運動野の神経活動から解読し、リアルタイムでテキストに変換するブレイン-コンピュータインターフェイスを開発した。2021年5月には、この概念実証(PoC)の成果を学術雑誌「ネイチャー」で発表している。
1分あたり90文字を入力することに成功
「T5」はこの概念実証でも被験者となった。「T5」がペンで紙にアルファベット文字を手書きする動作を思い浮かべると、神経細胞からの信号をとらえ、コンピュータに転送し、人工知能(AI)アルゴリズムが信号を解読して「T5」が意図する手や指の動きを推測する。
「T5」はこのブレイン-コンピュータインターフェイスを用いて1分あたり90文字を94.1%の精度で入力することに成功した。コンピュータ画面上の文字にカーソルを移動させるよりも2倍以上速く、健常者がスマートフォンで入力する速度(1分あたり115文字)とほぼ同等だ。
研究論文の筆頭著者でスタンフォード大学のフランク・ウィレット博士は、この概念実証の成果について「人工知能アルゴリズムを用いることで、手書きのようにスピードの変化や曲がった軌道を伴う複雑な動作を、一定の速度でカーソルをまっすぐ動かすといった単純な動きよりも速く簡単に解読できることがわかった」と述べている。
Eavesdropping on Brain Activity Turns Imagined Handwriting to Text