「ワクチン未接種者は寝ている間に強制接種だ!」 比大統領、ドゥテルテ節放つも虚しく響く
ワクチン接種に行かない奴、こっちから接種しに行くぞ! Erik de Castro - REUTERS
<かつては国際政治を揺るがした東南アジアの雄も、いまやレームダックとなったのか>
フィリピンのドゥテルテ大統領が進まない新型コロナウイルスのワクチン接種状況に業を煮やして「接種を受けたくない人にはこちらから就寝中の家に行き、強制的に接種する」と発言した。ドゥテルテ大統領はこれまでもワクチン接種率が上がらないことに苛立ち、未接種者に対して「刑務所行きだ」「国外追放だ」などと物議を醸す発言を繰り返してきた。
そうした「ドゥテルテ節」に国民もメディアも慣れてしまったのか、今回の発言も大きな問題とはなっておらず、大統領府も「単なる冗談だ」とコメントするだけで、2022年5月に大統領としての任期が切れるドゥテルテ大統領の影響力や威光にも陰りが生じているとの見方が有力だ。
「就寝中に家に入って接種する」
フィリピンの地元メディアによると10月11日夜のテレビ中継された閣議の席でドゥテルテ大統領は「多くの国民がワクチン接種を受けたくないことはわかっている。しかしワクチン接種を拒む人々は問題である」と感染拡大が止まらない状況の中で政府が積極的に進めているワクチン接種が成果をあまりあげていないことに不満を表明。
そして「そういう人が寝ている間に家に入って接種を受けさせようではないか。私が率先して実行するぞ」と発言したのだった。
大統領府のハリー・ロケ報道官は12日、ドゥテルテ大統領の閣議での発言に関して「単なる冗談だ」と一言コメントしただけだった。
過去にもワクチン接種率で苛立ち
ドゥテルテ大統領の暴言は2016年の大統領就任以降、たびたびメディアを賑わせてきた。最近はコロナの感染拡大に伴い、進まないワクチン接種に関する不規則発言が相次いでいた。
6月にはワクチン接種を望まない国民にたいしてフィリピンを出ていくように「脅迫」したほか、やはり6月にはテレビ演説で「政府の言うことを聞かない人々に私は怒っている」として「村落の指導者は接種拒否者の名前を記録するべきだ」と述べるとともに「ワクチン接種を拒むものは投獄する」とまで発言したのだった。
いずれのケースも大統領府が「大統領のいつもの冗談である」として国民やメディアに冷静な対応を呼びかける、というパターンが繰り返された。
低い接種率に焦燥感
フィリピンでは主に中国製ワクチンを中心に国民への接種が進められているが、6月時点で少なくとも1回の接種受けた国民は893万人で約6.1%にとどまり、7月には1回目を接種した人は10.22%、2回接種を受けた人は5.56%と低い水準で推移。8月には1日平均で接種回数が50万回と加速して合計接種数は900万回に達した。
しかし国民全体でみると1回の接種者は2913万人、26.7%と低く、東南アジアの中でも低水準にとどまっている。