最新記事

調査報道

「上級国民」たちの腐敗度が露わに...パンドラ文書、衝撃の中身

Enabling Kleptocracy

2021年10月13日(水)18時20分
ケーシー・ミシェル(調査報道ジャーナリスト)

一方で、不動産やプライベート・エクイティ(未公開株)の取引、オークションなどで泥棒政治家の富のおこぼれにあずかろうとしている欧米の金融プロフェッショナルにとって、重要なのは富の蛇口が開けっ放しであることと、おいしい手数料を得ることだけのようだ。コンサルタントやロビイスト、弁護士たちは、国境を越えた資金の流れが規制によって脅かされないように奔走している。

匿名のペーパーカンパニー、匿名の信託、規制や監督のない匿名の金融取引を基盤とする業界──。欧米の秘密主義の金融ツールは、限られた少数の支配者や反民主主義の有力者が自国の人々から好きなだけ富を奪い、市民を困窮させ、地域全体を不安定にし、自分の意のままに非自由主義的な活動に資金をつぎ込むことを可能にしている。

もっとも欧米諸国が、例えば独裁者たちの金融ネットワークを遮断して破壊するために制裁を発動しても、彼らは秘密保持を可能にする金融ツールに守られて制裁を逃れることができる。失脚した後でさえ、残虐行為で得た果実を享受しているのだから。

これは泥棒政治というコインの裏表のようなものだ。中国の太子党(共産党幹部の子弟)、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)、ベネズエラの政権を支持する実業家、イランの役人、ハンガリーの極右ネットワーク、アゼルバイジャンのギャング兼政治家など、彼らは皆、欧米の同じサービス、同じネットワーク、同じオフショア企業、同じ金融ツールを利用している。

彼らは国内に向けて反欧米や反民主主義のたわ言を吐きながら、その欧米の民主国家に頼って自分たちの富を守り、資金洗浄をして、隠した資産を必要なときにどんなことにでも使う。

カギは金融取引の透明性だが

今、私たちがやるべきことは分かっている。政治的立場を超えたグループが、既に賢明な政策提案を行っている。

カギとなるのは透明性だ。ペーパーカンパニーや信託、財団に関する透明性であり、不動産、美術品、高級品に関する透明性だ。これらの金融ツールに関わる弁護士ら欧米のプロフェッショナルに対する規制と合わせることによって、秘密を担保する金融ネットワークを表舞台に引きずり出すことができるだろう。

最近では、英政府が海外領土に企業の受益所有権の公的登録制度を整備させ、アメリカやカナダがペーパーカンパニー部門の浄化に乗り出すなど、進展も見られる。EUは弁護士や信託業者などに対する規制の強化を進めている。

ただし、このまま終わることは決してない。こうした解決策を実行するためには、重大な政治的意思が必要だ。アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、バルト諸国などは、自らオフショア経済を支える柱になってきた。そして、その全てが世界各地の泥棒政治に利用され、悪用されてきたのだ。

パンドラ文書の流出を機にこうした仕組みが終焉を迎えるだろう、などと考える理由は見当たらない。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

AI「グロック」、米市場でシェア拡大 性的画像巡る

ビジネス

米政府、印リライアンスにベネズエラ産原油の直接購入

ビジネス

GDP10─12月期は2四半期ぶりのプラス成長、年

ワールド

トランプ家暗号資産企業へのUAE出資問題、上院民主
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 2
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 7
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 8
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中