「上級国民」たちの腐敗度が露わに...パンドラ文書、衝撃の中身
Enabling Kleptocracy
一方で、不動産やプライベート・エクイティ(未公開株)の取引、オークションなどで泥棒政治家の富のおこぼれにあずかろうとしている欧米の金融プロフェッショナルにとって、重要なのは富の蛇口が開けっ放しであることと、おいしい手数料を得ることだけのようだ。コンサルタントやロビイスト、弁護士たちは、国境を越えた資金の流れが規制によって脅かされないように奔走している。
匿名のペーパーカンパニー、匿名の信託、規制や監督のない匿名の金融取引を基盤とする業界──。欧米の秘密主義の金融ツールは、限られた少数の支配者や反民主主義の有力者が自国の人々から好きなだけ富を奪い、市民を困窮させ、地域全体を不安定にし、自分の意のままに非自由主義的な活動に資金をつぎ込むことを可能にしている。
もっとも欧米諸国が、例えば独裁者たちの金融ネットワークを遮断して破壊するために制裁を発動しても、彼らは秘密保持を可能にする金融ツールに守られて制裁を逃れることができる。失脚した後でさえ、残虐行為で得た果実を享受しているのだから。
これは泥棒政治というコインの裏表のようなものだ。中国の太子党(共産党幹部の子弟)、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)、ベネズエラの政権を支持する実業家、イランの役人、ハンガリーの極右ネットワーク、アゼルバイジャンのギャング兼政治家など、彼らは皆、欧米の同じサービス、同じネットワーク、同じオフショア企業、同じ金融ツールを利用している。
彼らは国内に向けて反欧米や反民主主義のたわ言を吐きながら、その欧米の民主国家に頼って自分たちの富を守り、資金洗浄をして、隠した資産を必要なときにどんなことにでも使う。
カギは金融取引の透明性だが
今、私たちがやるべきことは分かっている。政治的立場を超えたグループが、既に賢明な政策提案を行っている。
カギとなるのは透明性だ。ペーパーカンパニーや信託、財団に関する透明性であり、不動産、美術品、高級品に関する透明性だ。これらの金融ツールに関わる弁護士ら欧米のプロフェッショナルに対する規制と合わせることによって、秘密を担保する金融ネットワークを表舞台に引きずり出すことができるだろう。
最近では、英政府が海外領土に企業の受益所有権の公的登録制度を整備させ、アメリカやカナダがペーパーカンパニー部門の浄化に乗り出すなど、進展も見られる。EUは弁護士や信託業者などに対する規制の強化を進めている。
ただし、このまま終わることは決してない。こうした解決策を実行するためには、重大な政治的意思が必要だ。アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、バルト諸国などは、自らオフショア経済を支える柱になってきた。そして、その全てが世界各地の泥棒政治に利用され、悪用されてきたのだ。
パンドラ文書の流出を機にこうした仕組みが終焉を迎えるだろう、などと考える理由は見当たらない。
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