世界で最も価値のある絵画を悪名高い贋作作家がNFTで販売 NFTバブルの行方は?
レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」 WIKIMEDIA COMMOMS
<ニセモノの名画のNFT、そして100%本物だと言い切れないその原作。それぞれ、価値の実態や保管に不安を抱え不完全さがあるものでもオルタナティブ投資の勢いは止まらない...>
悪名高いドイツの贋作画家ウォルフガング・ベルトラッチが、世界で最も価値のある絵画を元にしたNFTを販売している。ベルトラッチは、2011年に、14の有名な絵画を偽造した罪で有罪判決を受けたにも関わらず、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」(救世主)に由来する4,608点のオリジナル・デジタル作品を制作。膨大な利益が見込めるであろうことは想像に難くない。
ベルトラッチのウェブサイトでは、500年前の絵画「救世主」のオリジナルデジタルアート4,608点が販売されている。「TheGreats」と呼ばれるこのコレクションは、「サルヴァトールムンディ」の各バージョンに、ピカソ、ゴッホなどの画家を含む7つの芸術時代のスタイルが組み込まれているため、言うなれば「美術史におけるデジタルジャーニー」だ。
そもそも有名な芸術作品を鍛造するというベルトラッチのスタイルは、近年急拡大した非代替トークン(NFT)の世界で水を得た魚のごとく、ふさわしい場所を見つけ勢いづいている。NFTの特性として、これまでは富裕層に限られていた、時計、絵画、車、ジュエリーなどのオルタナティブ資産へのアクセスを一般に開き、投資の民主化に大きな変化をもたらすものとしてもてはやされているわけだが、なかでもNFTアートの高額取引は活況を呈している。
とはいえ、問題がないわけではない。
少し話はそれるが、本物の「サルバトール・ムンディ」の絵は、2017年のクリスティーズのオークションでサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子に4億5,030万ドル(約510億円)で落札されたが、実は問題を抱えている。専門家らは、この「サルバトール・ムンディ」をダ・ヴィンチが本当に作品を描いたかどうか根本的な部分を証明するのに苦労しているのだ。要するに、恐らくダ・ヴィンチ本人の作品だろうが、確証はないのだ。
一方でNFTは、たとえ複製できないNFTアートのオリジナル版とされているものでも、物理的には存在しない。入手した人が手にするのはその作品にアクセスするためのURLひとつと、あまりに心許ない。おまけに盲点なのが、完全にオンチェーンに情報が格納されないということ。デジタルアートや動画のNFTデータは容量が大きくブロックチェーンに書き込むことは非現実的なため、にイーサリアム上でなくストレージに格納される。
デジタルの最先端と謳われるNFTが、実はjprgファイルのURLの移転に過ぎず、何らかのアクシデントでストレージへのアクセスが遮断されたら現物資産のデータを取り戻すことは難しいというのはあまり知られていない。