最新記事

リモート教育

オンライン授業の拡大を妨げる家庭のIT環境格差

2021年10月7日(木)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

地域による差も大きい。家庭の端末、機器、通信環境の不足で困ったという学校の割合を都道府県別に出すとかなりの差異がある。端末の不足は66.3%~33.9%、機器の不足は70.8%~38.9%、通信環境の不足は65.8%~23.3%までの開きがある。<表1>は、機器の不足が支障になったと答えた公立小学校の割合を高い順に並べたものだ。

data211007-chart02.jpg

35の県で、家庭の情報機器の不足が支障となった小学校の率が50%を超えている。ウェブカメラなどは高価で、これがない家庭は少なくないだろう。家庭のリソース不足で悩んでいる学校の割合は、地方で高い傾向にある。各県の県民所得とマイナスの相関関係があり、子どもの貧困の影響も透けて見える。

地方の郡部では、オンライン学習に必要なリソースの普及率も低そうだ。しかし、こうした機器を必要としているのは田舎の家庭で、空間を越えた遠隔教育を行う上で必須のアイテムだ。へき地にあっては必須の学用品とみなし、用意できない家庭には、就学援助(学校教育法19条)の範疇で支給ないしは貸与するべきだ。当局も認識はしているようで、援助費目に「オンライン学習費」が加えられている。

コロナ禍によって、教育の情報化を進める上での課題が浮かび上がった。家庭のリソース不足はその最たるもので、「1人1台端末」を活用するGIGAスクール構想(文部科学省)などが打ち出されているが、日本の学校教育を国際水準にキャッチアップさせるには、政策的なテコ入れをもっとしなければならない。

<資料:文科省『全国学力・学習状況調査』(2021年度)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中