最新記事

ミャンマー

マレーシア、ASEANからのミャンマー排除を提案 解決の道筋見いだせぬ加盟国

2021年10月5日(火)14時20分
大塚智彦
ミャンマーのクーデターへの抗議デモ

ミャンマーに対するASEAN各国政府の対応は一枚岩ではない。写真は今年4月にASEAN首脳会議が行われたジャカルタでのミャンマー軍政への抗議デモ Antara Foto/Dhemas Reviyanto - REUTERS

<利害関係の異なる国々で統一対応が出ないのは国際社会の常なのか>

軍政による一般市民などへの強権的弾圧が続き、犠牲者が増えているミャンマー情勢に対して何らかの対応策が求められている東南アジア諸国連合(ASEAN)は10月4日にオンラインでの外相会議を開催。マレーシア外相が今後開催予定のASEAN首脳会議からミャンマー軍政代表を排除する可能性に言及した。

この提案には当事者であるミャンマーの強い反発に加えて、対ミャンマー問題に関して加盟国間でも温度差があるため、今後波紋を呼ぶことは必至とみられている。

ミャンマー代表も参加したASEAN外相会議で、マレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相は、身柄を拘束されているアウン・サン・スー・チーさんら民主政府関係者とASEAN特使との面会要請をミャンマー側が拒否していることを取り上げた。

そして「ミャンマーによるASEAN特使への非協力的な姿勢には失望した」と述べ、今後も同じような姿勢をミャンマー軍政が取り続けるなら、10月26日から予定されているASEAN首脳会議へのミン・アウン・フライン国軍司令官の参加を認めず排除することもありうるとの厳しい姿勢を示した。

ミャンマー側はASEAN特使とスー・チーさんらの面会について「公判中の被告であるスー・チーさんなどとの面会実現は難しい」との立場を示して、面会を拒否している。

インドネシア外相も厳しい姿勢

マレーシアと同様にミャンマーに厳しい立場をとり続けているインドネシアのルトノ・マルスディ外相も同じ外相会談の席でミャンマーに対して「ASEAN特使の活動に肯定的に応じようとしないミャンマーに対して加盟国からは通常の対応をもはやとるべきでないとの意見も出ている」と発言。「加盟国外相は現状を各国の首脳に伝えて、開催予定の首脳会議での対応を検討するべき時期が来た、というのがインドネシアの基本的立場である」と述べて、首脳会議でのミャンマー問題の集中討議をミャンマー首脳の参加排除を含めて今後早急に検討すべきとの立場を明らかにした。

「満場一致」の足かせ

こうした声がある一方で、ASEANには「内政不干渉」「満場一致」という原則がある。これが足かせとなってこれまでも南シナ海で一方的に海洋権益を主張、拡大し続けている中国に対して「名指しでの批判」や「厳しい姿勢」での統一見解や共同声明がまとまらず、ASEANの会議では「玉虫色の姿勢」や「穏やかな表現」に留まることが往々にしてあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米IT大手、巨額の社債発行相次ぐ AI資金調達で債

ワールド

トランプ政権、25年に連邦職員31.7万人削減 従

ワールド

米、EUにデジタル規制見直し要求 鉄鋼関税引き下げ

ビジネス

情報BOX:大手銀、米12月利下げ巡り見解分かれる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中