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世界最小の飛行するマイクロチップが開発される

2021年9月30日(木)18時59分
松岡由希子

世界最小の人工飛行物が開発された Northwestern University

<米ノースウェスタン大学の研究チームは、風散布型の種子を模倣した人工飛行物として世界最小のマイクロチップの開発に成功した>

米ノースウェスタン大学の研究チームは、飛行するマイクロチップ「マイクロフライヤー」の開発に成功した。プロペラのような形状をした風散布型の種子を模倣したもので、人工飛行物として世界最小だ。その研究成果は、2021年9月22日、学術雑誌「ネイチャー」で発表されている。

植物の種子よりも安定した軌道でゆっくりとした速度で落下する

研究チームは、「マイクロフライヤー」の設計にあたり、カエデなどの風散布型種子の空気力学を研究した。たとえば、プロペラのようなカエデの種子は空中でくるくると回りながらゆっくり地面に落下し、できるだけ長く風を利用して種子をより広範囲に散布させる。

研究チームがとりわけ着想を得たのは、風をとらえて回りながらゆっくりと落下できるブレード形状の羽根を持つコウシュンカズラの種子だ。

この種子の回転の仕組みを模倣するべく、「マイクロフライヤー」の周囲で空気がどのように流れるのかを計算モデリングで明らかにし、これに基づき、終端速度を最小化する最適な飛行構造を短期間で設計した。「マイクロフライヤー」は、植物の種子よりも安定した軌道を描きながらゆっくりとした終端速度で落下する仕組みとなっている。

microflier20210930_5.jpeg

Northwestern University

大気汚染のモニタリングなどへの活用が見込まれる

砂粒大の「マイクロフライヤー」は、モーターやエンジンがなく、風をとらえて飛行し、ヘリコプターのようにくるくると回りながらゆるやかに着陸する。センサーやバッテリー、無線通信用アンテナ、データ保存のための組み込みメモリなどを搭載することも可能だ。また、その材料として、地下水の中で自然に分解される生分解性材料を用いることも想定されている。

風を利用して長時間、広範囲にわたり安定的に飛行できる「マイクロフライヤー」は、大気汚染や環境汚染、空気感染性疾患のモニタリングなどへの活用が見込まれている。空気中の粒子を検出したり、pHセンサーを搭載して水質を測定したり、光検出器で日光曝露量を計測するといったことが考えられる。

Winged microchip is smallest-ever human-made flying structure

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