最新記事

中国停電

世界を揺るがす中国停電の正体は習近平への忠誠のしるし

China’s Busiest Manufacturing Areas Ordered to Stop Production

2021年9月30日(木)17時02分
レベッカ・クラッパー

停電は「主にエネルギー消費の抑制のための措置」だと、英調査会社IHSマークイットのラーラ・ドンはAP通信の取材にメールで応えた。

「脱炭素で世界のリーダーを目指す中国の野望の一環と見ていい」

中国当局は今年8月、コロナ禍の収束による生産活動の再開に伴い、20地域でエネルギー消費と大気汚染レベルが削減目標を上回る状況になっていると警告。習政権は経済のクリーン化と省エネ化をうたう野心的な計画を掲げており、削減目標の未達成は地方当局者の首が飛ぶほどの重大ミスとなる。

今回の停電は「これまでの電力不足以上に生産に深刻な影響を与えかねない」と、バンク・オブ・アメリカの報告書は指摘している。一部地域では「政府がエネルギー消費目標を緩和しても、すぐには電力不足は解消しないだろう」。

中国は産業部門のCO2排出量が世界最大級で、産業の省エネレベルを示すエネルギー強度が先進国より高い。ただ人口が多いため、1人当たりのエネルギー消費はぐっと少ない。

来年2月に北京と隣接する張家口で冬季五輪が開催されることも電力消費の抑制と無関係ではなさそうだ。習政権としては、五輪開催中、会場上空に広がるクリーンな青空を世界にアピールしたいだろう。

地方当局は帳尻合わせに必死

上海の北西に位置する江蘇省は工業が盛んだ。そのためもあって一部の都市は既に今年の電力消費割当の90%を使ってしまったと、省の当局者は国営メディアに明かした。年末までに何とか帳尻を合わせるのは、都市当局の務めだと、省当局者は突き放している。

中国最大の製造業の中心地である広東省も電力不足に陥っているが、その原因は中央政府がエネルギー消費の上限を設けたことだけでなく、省内の電力供給に大きな割合を占める水力発電が水不足にたたられていることだと、省当局は説明している。

東北部の遼寧省(省都は瀋陽)では、9月26日に当局が今年初めから8月までに電力需要が記録的に増加したと発表。風力発電などの発電量の低下が需要の急増に追い打ちをかけ、電力不足を招いていると、当局は述べている。

隣接する吉林省でも停電が頻発しているが、こちらは石炭不足が原因だとして、当局は9月27日、省のトップが石炭の緊急調達のため近くの内モンゴル自治区の炭鉱に交渉に行くと発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米メーシーズ、第4四半期利益が予想超え 関税影響で

ワールド

ブラジル副大統領、米商務長官と「前向きな会談」 関

ワールド

トランプ氏「日本に米国防衛する必要ない」、日米安保

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中