最新記事

法医学

ワクチン接種が進む中で「異状死」が急増、日本の「死因不明」社会の闇

2021年9月30日(木)21時08分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)
奥田貴久医師

法医学者の奥田貴久医師

<日本では年間で約17万人が異状死体として発見されるが、その多くが死亡した原因をきちんと調べてもらえない現実>

新型コロナ感染症によって自宅などで死亡する人が増えている。

警察が9月に発表したところによれば、2020年3月から2021年8月までに、新型コロナにより自宅などで死亡した人の数は817人になるという。しかもこの数字は、前月である7月から8倍に急増しており、その半数は、比較的若い50代までが占めていた。

新型コロナ禍であまり語られないのが、病院以外で死亡した感染者たちが発見後にどうなるのかという処遇の問題である。その実態を見て行く前に、まず日本の死にまつわる実態を見ていきたい。

そもそも、日本では年間に何人が死んでいるのか。日本では年間に137万人ほど(2021年)が死亡する。その中で、病院で死亡したり、通院していたなど明らかな治療中に自宅などで亡くなったといった場合には、病院の担当医などが「死亡診断書」を書くことになる。それを遺族などが役所に届け出をして死亡が確認される。

では病院以外で死ぬ場合はどうなるのか。そういう死は、日本では「普通ではない死」として「異状死」と呼ばれる。誤解ないように書くが、「異常」ではなく「異状」である。

日本全国で年間、約17万人が異状死体として発見される。そして、その多くが、死亡した原因をきちんと調べてもらえない可能性が高い。そんな現実が日本にあることはあまり知られていない。

外表を見るだけで死因を推定

異状死体が発見されれば、まず110番がなされ、それに対応するのは警察官ということになる。警察官が死亡者の発見現場に赴き、外見で遺体の様子を見て死因に当たりをつける。見るからに殺人の可能性がある場合、「司法解剖」が行われる。さらに犯罪の可能性が低くとも状況が異状な場合などは警察が「調査法解剖」を行うと決める。そしてどちらの場合も、遺体は基本的にその地域にある大学の法医学教室(法医学部)に送られて解剖が実施される。年間の解剖数は合わせて、全国で1万体ほどだ。

それ以外の場合は、警察と繋がりのある地域の開業医を呼び、遺体を見てもらって死因を推定で書いてもらう。問題は、警察も開業医も基本的に外表を見るだけで死因を推定していること。外から観察して死因を決めているために、体の中で実際には何が起きているのかはわからないのだ。それでも医師のみが書ける異状死体用の「死体検案書」の死因欄に推定で死因を書いておしまいとなる。

そんな表面的な死因究明が行われているため、これまでも殺人事件の見逃しなどが数多く起きてきた。ちなみに遺体の死因究明を専門とする法医学者である大学教授ですら、見た目で死因を推定すれば、40%ほどいわゆる「誤診」しているという指摘もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米情報機関、ベネズエラ暫定大統領の協力を疑問視=関

ビジネス

TikTok、メンタルヘルスに悪影響との米訴訟で和

ビジネス

仏LVMH、第4四半期は1%増収 中国事業回復で予

ワールド

メキシコ大統領、キューバへの石油供給停止を否定せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中