最新記事

動物

リス一匹一匹に性格があった 「大胆なリス」「社交的なリス」...米研究で解明

2021年9月29日(水)17時00分
青葉やまと

このほか、社交性の高いリスも同様の地点に好んで姿を現す傾向がみられたという。キンイロジリスは全体として単独行動が多く、あまり社会性の高い部類のリスではない。そのなかでも比較的社交性をもった個体は、繁殖に有利なのではないかと考えられている。

性格が行動に及ぼす効果は、個体レベルにとどまらないようだ。研究チームは、社交性の高い個体が多い集団ほど繁殖範囲を広げやすいなど、コミュニティレベルで利点をもたらしている可能性もあると述べている。

近年注目される動物の個性

ガーディアン紙は本件を「人間のような個性がリスに発見された」と報じた。記事は「恐れ知らず、攻撃的、運動が得意、そして人懐っこい。野鳥のえさ台からナッツを拝借しているのをみた人なら、誰もが知っていたことだろう」と述べ、身近な動物の知られざる一面を伝えている。

動物の個性という研究分野は比較的新しいものだが、近年その重要性が注目されつつある。アリパーティ博士は同校によるプレスリリースのなかで、「野生動物への取り組みにおいて個性を考慮することは、たとえば人間の活動による住みかの変化や破壊などによって環境が変化した際、その反応を予測するうえでとくに重要となる可能性があります」と述べている。

ちなみにアリパーティ博士を研究へ駆り立てたのは、他ならぬUCデービス校の環境だったようだ。キャンパスには多くのリスが生息し、マスコット的存在になっている。研究対象となったリスとは別種だが、彼女は日々リスと触れ合ううちに、リスにも個性があるのではないかという着想に至ったようだ。

まるで人間と同様に個性があるという発見は近年、リス以外でも行われている。フィンランドの動物行動学者たちが行った研究では、猫の個性と行動を7タイプで類型化できることが明らかになった。

同研究では、4300匹以上の猫の行動データをアンケートを通じて収集・分析した。この結果、「恐れ」「活動性」「人への攻撃性」「人との社会性」「猫との社会性」「グルーミング」「トイレ問題」の7つの項目から個性を分析できるという結論が得られたようだ。

猫以外にも、より広範囲の動物が個性をもっているとの指摘もある。サイエンス・アラート誌は、これまでにイソギンチャク、魚、鳥、哺乳類、クモ、トカゲなど幅広い種において個性や行動パターンの違いが確認されてきたと指摘する。さらに広く、おおむね動物全般が個性をもつと考える専門家も存在する。

ペットと長く付き合うと性格がみえてくるのと同じように、野生動物にも一匹ずつ違った行動パターンがあり、個性豊かな生活を送っているようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

東ティモール、ASEAN加盟 11カ国目

ワールド

米、ロシアへの追加制裁準備 欧州にも圧力強化望む=

ワールド

「私のこともよく認識」と高市首相、トランプ大統領と

ワールド

米中閣僚級協議、初日終了 米財務省報道官「非常に建
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中