最新記事

動物

温暖化に伴って突出部の大きさが変化している恒温動物がいる

2021年9月13日(月)18時38分
松岡由希子

オウムのクチバシが他の部分よりも暖かいことを示す Credit: Alexandra McQueen

<地球温暖化に伴って、手足や耳、尾、嘴といった突出部の大きさが変化している恒温動物が広く存在することが明らかに>

大きな耳をうちわのように動かして体の熱を逃がし、体温を調節するアフリカゾウや、嘴に温かい血液を集中させ、ここから熱を放出して体温を調節する鳥など、体温調節のために突出部を用いる恒温動物は少なくない。
米国の動物学者ジョゼフ・アレン博士は、1870年代に「寒冷地に生息する恒温動物の突出部は温暖地の個体よりも小さい」とする「アレンの法則」を提唱した。

この法則は、鳥類齧歯類に関する研究でも裏付けられている。そしてこのほど、地球温暖化に伴って、手足や耳、尾、嘴といった突出部の大きさが変化している恒温動物が広く存在することが明らかとなった。

アカサカオウムのくちばしの表面は、平均4〜10%大きくなった

豪ディーキン大学の研究チームは、これまでに出版された研究論文をレビューし、気候変動やこれに伴う気温上昇と並行して突出部のサイズが大きくなっている恒温動物がいることを見つけ出した。一連の研究成果は、2021年9月7日、学術雑誌「トレンズ・イン・エコロジー&エボリューションhttps://doi.org/10.1016/j.tree.2021.07.006」で発表されている。

たとえば、豪州で生息するアカサカオウムやビセイインコの嘴の表面は、1871年以降、平均4〜10%大きくなった。また、北米のユキヒメドリでは、特に寒冷環境において、嘴の大きさと短期間の極高低温に相関関係が認められた。

突出部の大きさの変化は哺乳類でもみられる。アラスカで生息するトガリネズミの尾と脚は1950年代から顕著に伸びている。中国のヒマラヤカグラコウモリの翼も1.64%大きくなっている。

気候変動は複雑で多面的な現象であり、その要因として特定することは困難だが、突出部の大きさの変化は、広い地域にわたって様々な種で起こっていることから、気候変動と無関係ではないと考えられている。

動物たちが気候変動とうまく折り合いをつけているわけではない

研究論文の筆頭著者でディーキン大学の博士課程に在籍するサラ・ライディング研究員は「このような変化は、動物たちが生き残るために進化したものにすぎず、必ずしも動物たちが気候変動とうまく折り合いをつけているわけではない」と指摘

「野生生物がどのように気候変動に対応していくのかを予測することも重要だが、温室効果ガス排出量を削減し、地球温暖化を食い止めることこそ、動植物種を保護するための最善策だ」と説いている

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

フジHD、株式買い増しはTOBでと旧村上系から通知

ワールド

北京市、住宅購入規制さらに緩和 需要喚起へ

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中