最新記事
動物温暖化に伴って突出部の大きさが変化している恒温動物がいる
オウムのクチバシが他の部分よりも暖かいことを示す Credit: Alexandra McQueen
<地球温暖化に伴って、手足や耳、尾、嘴といった突出部の大きさが変化している恒温動物が広く存在することが明らかに>
大きな耳をうちわのように動かして体の熱を逃がし、体温を調節するアフリカゾウや、嘴に温かい血液を集中させ、ここから熱を放出して体温を調節する鳥など、体温調節のために突出部を用いる恒温動物は少なくない。
米国の動物学者ジョゼフ・アレン博士は、1870年代に「寒冷地に生息する恒温動物の突出部は温暖地の個体よりも小さい」とする「アレンの法則」を提唱した。
この法則は、鳥類や齧歯類に関する研究でも裏付けられている。そしてこのほど、地球温暖化に伴って、手足や耳、尾、嘴といった突出部の大きさが変化している恒温動物が広く存在することが明らかとなった。
アカサカオウムのくちばしの表面は、平均4〜10%大きくなった
豪ディーキン大学の研究チームは、これまでに出版された研究論文をレビューし、気候変動やこれに伴う気温上昇と並行して突出部のサイズが大きくなっている恒温動物がいることを見つけ出した。一連の研究成果は、2021年9月7日、学術雑誌「トレンズ・イン・エコロジー&エボリューションhttps://doi.org/10.1016/j.tree.2021.07.006」で発表されている。
たとえば、豪州で生息するアカサカオウムやビセイインコの嘴の表面は、1871年以降、平均4〜10%大きくなった。また、北米のユキヒメドリでは、特に寒冷環境において、嘴の大きさと短期間の極高低温に相関関係が認められた。
突出部の大きさの変化は哺乳類でもみられる。アラスカで生息するトガリネズミの尾と脚は1950年代から顕著に伸びている。中国のヒマラヤカグラコウモリの翼も1.64%大きくなっている。
気候変動は複雑で多面的な現象であり、その要因として特定することは困難だが、突出部の大きさの変化は、広い地域にわたって様々な種で起こっていることから、気候変動と無関係ではないと考えられている。
動物たちが気候変動とうまく折り合いをつけているわけではない
研究論文の筆頭著者でディーキン大学の博士課程に在籍するサラ・ライディング研究員は「このような変化は、動物たちが生き残るために進化したものにすぎず、必ずしも動物たちが気候変動とうまく折り合いをつけているわけではない」と指摘。
「野生生物がどのように気候変動に対応していくのかを予測することも重要だが、温室効果ガス排出量を削減し、地球温暖化を食い止めることこそ、動植物種を保護するための最善策だ」と説いている。