最新記事

変異株

ワクチン耐性を持つかもしれないミュー株、全米49州で確認

Mu COVID Variant That May Resist Vaccines Found in 49 U.S. States

2021年9月7日(火)19時28分
ジェニ・フィンク
ボゴタのワクチン接種会場

ミュー株の比率はまだ少ないが、中南米のコロンビアとエクアドルで着々と増えている(8月15日、コロンビアの首都ボゴタのワクチン接種会場)

<まだ感染全体に占める比率は少ないが、現在99%を占めるデルタ株も最初はそうだった>

新型コロナウイルスの変異株の一種で、ワクチンの効果が減少する可能性があるとされているミュー株が全米に広がっている。感染事例がまだないのはネブラスカ州だけだ。

1月に南米コロンビアで新たな変異株として特定されて以来、ミュー株は、アメリカを含む41の国々に拡散した。感染確認件数のうちミュー株が占める割合はまだ1%未満だが、感染力が高く、ワクチンや自然免疫の効果を減少させる可能性もあることから、保健当局はこの変異株の動向を注視している。

新型コロナウイルス変異株に関するオープンソースデータを提供しているウェブサイト「Outbreak.info」の情報によると、ネブラスカ州を除くアメリカのすべての州およびコロンビア特別区で、少なくとも1件のミュー株感染事例が検出されているう。

ミュー株が最も多く報告されているのはカリフォルニア州の384件だが、同州でゲノム解析を行った検体全体の0.2%を占めるにすぎない。9月3日の時点で、ロサンゼルス郡では167件でのミュー株が検出されたと、同郡の保健局が発表している。これらのミュー株は、7月19日から8月21日の間に解析を行った検体から見つかったもので、その中でも7月中に発見されたものが大半を占めている。

ロサンゼルス郡保険局のバーバラ・フェレラー局長は声明で、「ミュー株のような変異株が特定され、さらにこれらの変異株が世界的に拡散しているということは、自分自身と周りの人々を守るための対策を今後も継続する必要があるということだ」と述べた。「ワクチン接種と、何重もの感染防止措置が重要だ。感染経路を断ち切り、ウイルスの拡散を押しとどめる必要がある。万一拡散すれば、ウイルスがさらに危険な株へと変異しかねない」

アラスカでは全体の4%

ミュー株の検出がカリフォルニア州に次いで多かったのは、メイン州、コネチカット州、フロリダ州だ。フロリダ州での検出は全米で2番目に多く、解析を行った6万475件の検体のうち、384件がミュー株であると特定された。

検出数は多いが全体に占める割合としては低いカリフォルニア州やフロリダ州とは対照的なのが、アラスカ州だ。アラスカ州での検出数は146例にとどまるが、同州で解析が行われた検体の中で占める割合は4%と、他の州と比べてかなり高い割合になっている。

世界保健機関(WHO)は8月30日、ミュー株を新たに「注目すべき変異株」に指定した。その特性から、感染力がさらに高まり、ワクチンへの耐性が強くなるおそれがあるとしてのことだ。しかし、米疾病対策センター(CDC)は今のところ、同様の指定を行っていない。

米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は9月2日、ミュー株に関して、当局は「注視」していると述べた。ミュー株はすでにアメリカ国内で確認されているものの、同国内で圧倒的多数を占める状態にあるかというと、それには「ほど遠い」とファウチは述べた。現在、圧倒的多数の99%を占めるのはデルタ株だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中